中小企業診断士二次試験事例4(平成23・解答手順)
手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでD社の業種を確認 ⇒0.5分
1行目冒頭に「D 社は日本海側の地方都市にある創業 25 年の水産加工メーカー」とある。
手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入。解答に影響の与えそうな箇所には青のアンダーラインを引く ⇒3分
手順5:再度与件文を読み、各設問箇所に解答に使用する行番号とキーワードを記入 ⇒6.5分
与件文
①D 社は日本海側の地方都市にある創業 25 年の水産加工メーカーである。資本金 1,300 万円、総資産約 13 億円、売上高約 24 億 5 千万円、従業員数は 35 名(アルバイト・パート除く)で、地元漁港から揚がる魚介類を中心に、水産物の加工品を主に地元スーパーおよび外食産業に卸す他、年に数回、飛び込みの需要にも応じている。
②近年の販売実績は、食の安全に対する消費者意識、生活習慣病を予防する食生活への関を反映して、地元で揚がる魚介類に対するニーズが高まったこともあり、おおむね好調である。さらに、数年前より全国に展開する大手スーパーとの取引が始まり、売上の 15%を占めるなど販売も順調に伸びているS。
③しかしながら、3 つの工場設備は生産能力に余剰があるものの老朽化がみられW、大手スーパーから増産の要請も見込まれるためO、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)導入を前提とした新規工場建設を検討している。工場用地についてはすでに取得済みである。工場新設にあたっては、製品ラインの見直しが求められているW。
④また、D 社では上記の状況とは別に、単身世帯の増加、個食への対応として、電子レンジや真空パック用個別包装の製品開発、生産、販売という新規事業案が提案されている。
⑤D 社の財務諸表および同業他社の財務諸表は次のとおりである。
手順2:各設問文を読んで、何を答えればいいのかを把握 ⇒5分
手順4:各設問文を読んで、与件文の関連箇所の行番号とキーワードをわかる範囲で書き出し ⇒3分
手順6:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 2分
問1が全設問に関連性しそうだが現時点では不明。設問の難易度は知識不足で判断できず。よって解答は順序よく行うことにした。
第1問(配点 35点)
(設問 1 )
D 社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社との比較を通じて、D 社の財務上の問題点と思われる点を特徴づける経営指標を3つ取り上げ、その名称を(a)欄に示し、数値を計算(小数点第3位を四捨五入すること)して(b)欄に示した上で、その原因を(c)欄に、改善策を(d)欄にそれぞれ 60 字以内で述べよ。
手順4、5、6の実施結果
行③の「生産余剰」、「施設の老朽化」及び「製品ラインの見直し」 ➡ 行②「販売」は「好調」なので生産性の向上が課題? ➡ 順番どおり解答
D社の貸借対照表だけなぜ2年分ある? ⇒ 2年の平均値を使う? ⇒ 同業他社との比較値として適切? ⇒ 迷う時間は無いので22年度だけの比較が適切と判断 ➡ 設問2を見て疑問解消できた
原因(c)と改善策(d)の分析力が必要 ⇒ 日商簿記2級程度の知識は必須と痛感
貸借対照表及び損益計算書の分析
➡ 販売好調なのに売上高総利益(478÷2450×100%=19.51%)は同業他社(396÷1935×100%=20.47%)を下回る。原因は売上原価なので当該経費を構成する施設の老朽化(修理代や電気代など)が直接の原因と考えた
➡ 「製造ラインの見直し」という文言から在庫過多を疑い棚卸資産回転率を比較するとD社(2450÷368=6.66回)に対し同業他社(1935÷182=10.63回)と低いことを確認できた
➡ 遊休化している「新工場用地」と「営業外費用」の「(うち支払利息)(40)」の記述から、負債過多を疑うと、負債比率がD社(969÷333×100%=290.99%)で同業他社(596÷250×100%=238.40%)を上回っていることを確認。長期借入金だけでなく、短期借入金も資金繰りの悪化(=当座比率100%未満で確認)で増加
解答例
➡︎ (a)売上高総利益率 (b) 19.51 (%)
➡︎ (a)棚卸資産回転率 (b) 6.66 (回)
➡︎ (a)負債比率 (b)290.99 (%)
➡ 原因: 施設の老朽化で製造原価が増加し、製品ラインの煩雑さが在庫効率を低下させたことで長短期の負債増を招き、資金繰りを悪化させた。 (文字数:61≒60)
➡ 改善策: 工場の新設を急ぐことで製造原価を低減し、製品ラインの見直しで在庫効率を高め、収益アップの実現で資金繰りを改善させる。 (文字数:58)
(設問 2 )
D 社の営業キャッシュフローの計算過程を(a)欄に示し、今後の経営上の課題について(b)欄に 100 字以内で述べよ。
手順4、5、6の実施結果
指定が無いので直接法ではなく間接法で作成する ➡ 順番どおり解答
営業外費用の「(うち支払利息)」、流動資産の「受取手形・売掛金」及び同「棚卸資産」が同業他社より多い ➡ 流動資産の早期現金化が課題か?
貸借対照表及と損益計算書からキャッシュフローの計算過程を作成
D社の貸借対照表だけなぜ2年分ある? ⇒ 2年分無いとキャッシュフローを作成できないから ⇒ 以下で「増加額」は貸借対照表各科目のH22-H21
➡ 「営業キャッシュフロー」の算式=税引前当期純利益+非現金支出費用増加額(減価償却費、貸倒引当金等)-営業外収益+営業外費用-特別利益+特別費用±経過勘定(前受金、前払金等)-営業関連資産の増加額+営業関連債務の増加額+受取利息-支払利息-法人税等
キャッシュ(現金)が増える項目ならプラス、減る項目ならマイナスにする ⇒ 資産はマイナス、負債はプラス項目になる ⇒ 以下で「増加額」は貸借対照表各科目のH22-H21
➡ 上記算式に貸借対照表と損益計算書の該当数字を当てはめる。解答用紙の枠内に収めるため0の科目は非表示
➡ 税引前当期純利益15から開始して、現金ベースの営業利益を求める作業と理解している(私見です)
➡ 減価償却費 貸借対照表上の項目は前年度からの増減分22(=490-468)を記入し、現金の支出がないので足し戻す(+)
➡ 営業外収益 5 ➡ 税引前当期純利益から営業利益まで遡るため引き戻す(-)
➡ 営業外費用 40 ➡ 営業利益まで遡るため足し戻す(+)
➡ 売上債権の増減額 21(受取手形・売掛金=360-339)➡ 入金がないので引き戻す(-)
➡ 棚卸資産の増減額 -9(=368-377)➡ 入金がないので引き戻す(-)
➡ 仕入債務の増減額 -13(支払手形・買掛金=285-298)➡ 出金がないので足し戻す(+)➡ +(-13)=-13
※「その他固定負債」を算入する解答もあるが、実質借入金なので「財務活動CF」と判断し除外した(=私見)
➡ 小計(様式上必要) 47(=15+22-5+40-21+9-13)
※個々の数字を算式に当てはめる場合の+-符号の変化に注意(正負の数の問題)
➡ 利息の受取額 5 =(うち受取利息)➡ 投資キャッシュフローに思えるが、営業キャッシュフローに含めるのが一般的らしい(+)
➡ 利息の支払額 40 =(うち支払利息)➡ 財務キャッシュフローに思えるが、営業キャッシュフローに含めるのが一般的らしい(-)
➡ 法人税等の支払額 4 =(法人税等6-未払法人税等(4-2))➡ 法人税等は(-)、未払法人税等は(+)項目
➡ 営業キャッシュフロー 8(=47+5-40-4)
解答例
➡︎ 税引前当期純利益 15
➡︎ 減価償却費 22
➡︎ 営業外利益 -5
➡︎ 営業外費用 40
➡︎ 売上債権の増減額 -21
➡︎ 棚卸資産の増減額 9
➡︎ 仕入債務の増減額 -13
➡︎ 小計 47
➡︎ 利息の受取額 5
➡︎ 利息の支払額 -40
➡︎ 法人税等の支払額 -4
➡︎ 営業キャッシュフロー 8
今後の課題
➡ 題意は営業キャッシュフローから見える今後の営業上の課題と判断
➡利息の支払額-40、売上債権の増減額-21から、新工場の建設によって製造ラインの合理化と売上債権の早期回収を図り、営業キャッシュを増加できるかが今後の課題と考える
解答例
➡︎ 営業キャッシュフローを増加させて超短期の負債を軽減させることである。具体的には①新工場の建設を急ぐことで製造ラインを見直して在庫を圧縮させる。②販売条件の改善交渉で売上債権の早期回収を図ることである。(文字数:100)
第2問(配点 15 点)
D 社は人気製品の1つである製品 W について、月産 20,000 単位の生産能力をもってお り、来月の予定生産量を得意先からの予想受注量である 18,000 単位に定めている。販売価格は単位当たり 1,000 円である。製造原価は、単位当たり変動費 500 円、月間固定費は 8,000,000 円である。販売費・一般管理費はすべて固定費である。 そこへ、アジア地域の新規顧客から 1 単位 800 円の価格ならば 2,000 単位購入したい旨のオファーがあった(発送諸掛は先方負担)。社内で検討したところ、海外取引でこのような値引きを行っても、国内需要と国内販売価格には影響を与えないと予想されている。 この特別注文を受諾すべきかどうかについて根拠となる数値を示しながら 40 字以内で述べよ。
手順4、5、6の実施結果
➡限界利益、貢献利益の金額が根拠になると考え、設問順に解答することとした
特別注文で得られる利益の算出
➡限界利益は600000円=売上高800円×2000単位-(500円×2000単位)
➡オファーを受けても来月の予定生産量が生産能力の範囲丁度なので固定費用8百万円に変動はない
➡「国内販売価格に影響を与えない」ので、18000単位の生産分は来月も黒字が見込まれる ➡ 売上高=1000円×18000単位)-(変動費=500円×18000単位)-固定費8000000円=1000000円
➡オファーの2000単位は限界利益が黒字(売上高=800円×2000単位)-(変動費用=500円×2000単位)=600000円なので、オファーは受けるべき
解答例
➡︎ 固定費が増加しないこととオファー分の限界利益が60万円あることから受諾すべき。(文字数:39)
第3問(配点 25 点)
D 社の第3設備では、X、Y、Z の3種類の製品を製造している。製品別の損益計算書は 以下のとおりである。
製品 X と Y は利益を上げているが、製品 Z は赤字である。そこで、製品 Z の製造を中止してはどうかとの検討を行うことにした。製品 Z を廃止すべきかどうかについての計算過程を(a)欄に示し、結論を理由とともに(b)欄に 50 字以内で述べよ。なお、製品 Z の製造中止によって、製品 X と Y の販売量等は全く影響を受けないと仮定する。
手順4、5、6の実施結果
➡製品Zの生産を中止する場合とは、Zの貢献利益がマイナスである場合なので、製造中止はしない事例と考えた
➡本問での計算過程を、製品Zの生産を中止した場合の営業利益(損失)額の計算と判断した
➡Zを廃止しても「なお」以下の記述からXYの金額は表内と同じ
特別注文で得られる利益の算出
➡XYの貢献利益合計-共通固定費=(225-100+250-150)-(87.5+87.5+140)=-90(営業損失)
解答例
➡︎ 単位:百万円
➡︎ Xの貢献利益=225-100=125
➡︎ Yの貢献利益=250-150=100
➡︎ 共通固定費=87.5+8735+140=315
➡︎ 営業損失=125+100-315=-90
結論と理由
➡廃止すべきではない。理由は、Zは共通固定費の支払に貢献しており、廃止すると営業損失となるからである。
解答例
➡︎ 廃止すべきではない。理由は、Zは共通固定費の支払に貢献しており、廃止すると営業損失になるからである。(文字数:50)
第4問(配点 25 点)
D 社の新規事業案について、今後 3 年間の予測情報をもとに検討することになった。今 後 3 年間の売上は、表に示すように販売が好調に推移する場合と不調に終わる場合の 2 通が予想されており、毎年、それぞれ確率 50%で生じると予想されている。また、コストについては、毎年低コストで済む場合と高コストになる場合の 2 通りが予想されており、こちらも確率がそれぞれ 50%と予想されている。キャッシュフローは売上からコストを控除したものとみなすことができ、初期投資は 15 百方円と見積られている。このとき、次の設問に答えよ。
(設問 1 )
各年のキャッシュフローの期待値を(a)欄に、正味現在価値の期待値を(b)欄に示し、どのような意思決定を下すべきかを(c)欄に述べよ。なお、計算を簡便化するため、キャッシュフロー等を現在価値に割り引くことはしない。
手順4、5、6の実施結果
➡算式方法の知識が不充分なので設問順に解答した
➡確率が売上もコストも50%なので4通りの予想の平均値をベースに算出できるのではと考えた
キャッシュフローの期待値(a)
➡1年目(100-80+100-150+50-80+50-150)÷4=-160÷4=-40
➡2年目(150-80+150-150+100-80+100-150)÷4=40÷4=10
➡3年目(200-80+200-150+100-80+100-150)÷4=140÷4=35
正味現在価値の期待値(b)
➡「現在価値に割り引くことをしない」ので、-投資額+3年間のキャッシュフロー=-15+(-40+10+35)=-10
解答例(a)
➡︎ 1年目のCF -40百万円
➡︎ 2年目のCF 10百万円
➡︎ 3年目のCF 35百万円
解答例(b)
➡︎ -10百万円
解答例(c)
➡︎ 正味現在価値の期待値がマイナスとなるため、投資は見送る。
(設問2 )
初期投資に先だって、R&D 費として 10 百万円を投資することで、コストの高低が判明すると仮定した場合、(設問 1)で得られた結果はどのようになるか、根拠となる数値を示しながら 150 字以内で述べよ。
手順4、5、6の実施結果
➡R&D?状態なので最後に解答する
➡「(設問1)で得られた結果がどうなるか」なので、「意思決定」変更の可否?
キャッシュフローの期待値(a)
➡販売好調でコスト80の場合のCF
➡1~3年目(100-80)+(150-80)+(200-80)=210・・・イ
➡販売不調でコスト80の場合のCF
➡1~3年目(50-80)+(100-80)+(100-80)=10・・・ロ
➡コスト150の場合のCF
➡販売好調でコスト80の場合
➡1~3年目(100-150)+(150-150)+(200-150)=-50+0+50=0・・・ハ
➡販売不調でコスト150の場合
➡1~3年目(50-150)+(100-150)+(100-150)=-100-50-50=-200・・・ニ
正味現在価値の期待値(b)=根拠
➡イの場合はCF-15-10>0なので投資する -15-10+210=185
➡ロの場合イの可能性があるので投資する=-15-10+10=-15
➡ハの場合は投資しないので経費はR&Dのみ=-10
➡ニの場合は投資しないので経費はR&Dのみ=-10
➡期待値は(185-15-10-10)÷4=150÷4=37.5
※イで投資を決める場合にはロも投資対象になるので-15も-10も算入のこと、ハ・ニで投資を見送る場合でもR&D費は発生するので経費は0にならないこと、場合分けも0の場合を除く2つ(イ・ロ)ではなくロ・ハを含めた4で割る必要があることに注意
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