中小企業診断士二次試験事例2(令和02・解答手順)

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでB社の業種を確認 0.5分

一行目冒頭に「B社は、資本金450万円、社長をはじめ従業者10名(パート・アルバイト含む)の農業生産法人(現・農地所有適格法人)」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入 10分

手順5:与件文を読み、各設問の解答として引用する箇所に設問と同じ色のマーカーを塗る 10分

SWOT分析結果の与件文にマーカーをすると逆に判別し辛いので省略した。

与件文

B社は、資本金450万円、社長をはじめ従業者10名(パート・アルバイト含む)の農業生産法人(現・農地所有適格法人)である。ハーブの無農薬栽培S、ハーブ乾燥粉末の一次加工・出荷を行っている。

B社は、本州から海を隔てたX島にある。島は車で2時間もあれば一周できる広さで、島内各所には海と空、緑が鮮やかな絶景スポットがある。比較的温暖な気候で、マリンスポーツや釣りが1年の長い期間楽しめ、夜は満天の星空が広がる。島の主力産業は、農業と観光業である。ただし島では、若年層の人口流出や雇用機会不足、人口の高齢化による耕作放棄地の問題、農家所得の減少などが深刻化し、地域の活力が低下して久しいT

B社の設立は10年ほど前にさかのぼる。この島で生まれ育ち、代々農業を営む一家に生まれたB社社長が、こうした島の窮状を打開したいSと考えたことがきっかけである。B社設立までの経緯は以下のとおりである。

社長は、セリ科のハーブY(以下「ハーブ」と称する)に目を付けた。このハーブはもともと島に自生していた植物で、全国的な知名度はないが、島内では古くから健康・長寿の効能があると言い伝えられてきた。現在でも祝いの膳や島のイベント時に必ず食べる風習が残り、とくに高齢者は普段からおひたしや酢みそあえにして食べる。O社長はこのハーブの本格的な栽培に取り組み、島の新たな産業として発展させようと考えた。

まず社長が取り組んだのは、ハーブの栽培手法の確立であった。このハーブは自生植物であるため、栽培ノウハウは存在しなかった。しかし、社長は農業試験場の支援を得て実験を繰り返し、無農薬で高品質のハーブが同じ耕作地で年に4~5回収穫できる効率的な栽培方法を開発したS一面に広がるハーブ畑は、生命力あふれる緑の葉が海から吹く風に揺れ、青い空と美しいコントラストを生み出している。

一般的にハーブの用途は広く、お茶や調味料、健康食品などのほか、アロマオイルや香水などの原材料にもなるS。社長は次に、このハーブを乾麺や焼き菓子に練りこんだ試作品をOEM企業に生産委託し、大都市で開催される離島フェアなどに出展して販売を行った。しかし、その売上げは芳しくなかった。社長は、このハーブと島の知名度が大消費地では著しく低いWことを痛感し、ハーブを使った自社による製品開発をいったん諦めた。社長はハーブの販売先を求めて、試行錯誤を続けた。

B社設立の直接的な契機となったのは、社長が大手製薬メーカーZ社と出合ったことである。消費者の健康志向を背景にますます拡大基調にあるヘルスケア市場Oでは、メーカー間の競争も激しい。Z社は当時、希少性と効能を兼ね備えた差別的要素の強いヘルスケア製品の開発可能性を探っており、美しい島で栽培された伝統あるハーブが有するアンチエイジングの効能と社長の高品質かつ安全性を追求する姿勢、島への思い入れを高く評価したS。社長もZ社もすぐに取引を開始したかったが、軽い割にかさばるハーブを島から島外の工場へ輸送するとなるとコストがかかることがネックとなったW

そこで社長自ら島内に工場を建設し、栽培したハーブを新鮮なうちに乾燥粉末にするところまで行い、輸送コスト削減を図ろうと考えた。Z社もそれに同意した。その結果、B社はハーブの栽培・粉末加工・出荷を行うための事業会社として、10年ほど前に設立された。

Z社は予定どおり、B社製造のハーブの乾燥粉末を原材料として仕入れ、これをさらに本州の工場で加工し、ドリンクやサプリメントとして全国販売した。これらの製品は、島の大自然とハーブからもたらされる美を意識させるパッケージで店頭に並び、主として30~40歳代の女性層の支持を獲得したS。この島の空港や港の待合室にも広告看板が設置され、島とハーブの名前が大きく明示されている。そのため、とくにヘルスケアに関心の高い人たちから、このハーブが島の顔として認知されるようになってきた。こうした経緯もあって、島民は昨今B社の存在を誇りに感じ始めているO

ただし、Z社のこの製品も発売から約10年の歳月を経て、売れ行きが鈍ってきた。このところ、B社とZ社とのハーブの取引量は徐々に減少している。Z社担当者からは先日、ブランド刷新のため、あと2~3年でこの製品を製造中止する可能性が高いことを告げられたT

現在のB社は、このハーブ以外に、6~7種類の別のハーブの栽培・乾燥粉末加工を行うようになっている。最近ではこのうち、安眠効果があるとされるハーブ(Yとは異なるハーブ)が注目を集めているSZ社との取引実績が安心材料となり、複数のヘルスケアメーカーなどから安眠系サプリメントなどの原材料として使いたいと引き合いが来るようになったO。しかし、取引が成立しても、Z社との取引に比べるとまだ少量であり、B社の事業がZ社との取引に依存している現状は変わらないW

最近になって、社長は自社ブランド製品の販売に再びチャレンジしたいという思いや、島の活性化への思いがさらに強くなってきた。試しに、安眠効果のあるハーブを原材料とした「眠る前に飲むハーブティー」というコンセプトの製品をOEM企業に生産委託し、自社オンラインサイトで販売してみたところ、20歳代後半~50歳代の大都市圏在住の女性層から注文が来るようになったO

島の数少ない事業家としての責任もあるため、社長は早期に事業の見直しを行うべきだと考え、中小企業診断士に相談することにした。

手順2:各設問文を読んで解答に必要な5W2Hを確認しアンダーライン 4.5分

手順4:各設問文を読んで、与件文から解答を探さなければいけない文言箇所にマーカーで色塗り(設問別に色分け) 5分

手順6:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 5分

問1が全設問に関連性しそうだが現時点では不明。設問の難易度は知識不足で判断できず。よって解答は順序よく行うことにした。

第1問(配点20点)

解答例はこちら

現在のB社の状況について、SWOT分析をせよ。各要素について、①~④の解答欄にそれぞれ40字以内で説明すること。

第2問(配点30点)

解答例はこちら

Z社との取引縮小を受け、B社はハーブYの乾燥粉末の新たな取引先企業を探している。今後はZ社の製品とは異なるターゲット層を獲得したいと考えているが、B社の今後の望ましい取引先構成についての方向性を、100字以内で助言せよ。

第3問(配点30点)

解答例はこちら

B社社長は最近、「眠る前に飲むハーブティー」の自社オンラインサイトでの販売を手がけたところ、ある程度満足のいく売上げがあった。

(設問1)

上記の事象について、アンゾフの「製品・市場マトリックス」の考え方を使って50 字以内で説明せよ。

(設問2)

B社社長は自社オンラインサイトでの販売を今後も継続していくつもりであるが、顧客を製品づくりに巻き込みたいと考えている。顧客の関与を高めるため、B社は今後、自社オンラインサイト上でどのようなコミュニケーション施策を行っていくべきか。100字以内で助言せよ。

第4問(配点20点)

解答例はこちら

B社社長は、自社オンラインサイトのユーザーに対して、X島宿泊訪問ツアーを企画することにした。社長は、ツアー参加者には訪問を機にB社とX島のファンになってほしいと願っている。絶景スポットや星空観賞などの観光以外で、どのようなプログラムを立案すべきか。100字以内で助言せよ。

手順7:解答の作成 45分

問1の解答に盛り込む事項

S(強み)➡︎ 与件文③「島の窮状を打開したい」➡︎ ⑤ハーブの効率的な栽培方法を確立 ➡︎ ⑥ハーブは多用途 ➡︎ ⑦ハーブが有するアンチエイジングの効能と社長の高品質かつ安全性を追求する姿勢、島への思い入れを高く評価 ➡︎ ⑨30~40歳代の女性層の支持を獲得 ➡︎ ⑪安眠効果があるとされるハーブ(Yとは異なるハーブ)が注目を集めている ➡︎ ⑫20歳代後半~50歳代の大都市圏在住の女性層から注文が来るようになった

Sの解答例① ➡︎ 無農薬、高品質で効率的にハーブを栽培できること、大手製薬メーカーとの取引実績。

W(弱み)➡︎ 与件文⑥自社ブランドの開発能力不足 ➡︎ ⑪新製品の市場開拓能力の不足、既存製品は大手一社に取引依存

Wの解答例② ➡︎ 自社製品の販売力の不足、新製品の開発力の不足、既存製品の取引を大手一社に依存。

O(機会)➡︎ 与件文⑦ヘルスケア市場は拡大基調 ➡︎ ⑨B社に島民が好意的 ➡︎ ⑪複数メーカーから引き合いが来ている ➡︎ ⑫新商品の注文が大都市圏の20代後半から50代女性から来始めた

Oの解答例③ ➡︎ 市場が拡大基調、新商品に複数メーカーからの引き合いと大都市圏女性層からの注目。

T(脅威)➡︎ 与件文①過疎化等による地域活力の低下 ➡︎ ⑦ヘルスケア市場競争激化 ➡︎ ⑩現行取引の減少と停止予告

Tの解答例④ ➡︎ X島の地域活力の低下、ヘルスケア市場の競争激化、現行取引の減少と停止の可能性。

問1の解答の下書きメモ

文字数が40字いないと短いので、与件文の羅列では収まらない。よって、優先順位をつけ短い文章で羅列した

解答例 ➡︎ 上記SWOTの①〜④

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問2の解答に盛り込む事項

Z社の商品とは異なるターゲット層 ➡︎ 与件文⑨Z社の「ドリンクやサプリメント」がターゲットにする層を避ける

今後の望ましい取引先構成 ➡︎ 与件文⑥「お茶や調味料、健康食品などのほか、アロマオイルや香水などの原材料にもなる」➡︎

問2の解答の下書きメモ

解答例 ➡︎ お茶、調味料や健康食品などの食品メーカー、アロマオイルや香水などの化粧品メーカーで、ハーブYの乾燥粉末をZ社の客層と被らない製品の原材料として利用するメーカーを新規取引先として開拓するよう助言する。

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問3設問1の解答に盛り込む事項

アンゾフの「製品・市場マトリックス」の戦略は何か、が問われている ➡︎ 一次知識で4区分の正確な理解がないと解けない

与件文⑪から商品は原材料から「眠る前に飲むハーブティ」に変更しているので「新商品」と判断

与件文⑪から顧客はメーカーから消費者に変更しているので「新規市場」と判断

該当する戦略は、「新商品」を「新規市場」に投入した「多角化戦略」と判断

「多角化戦略」のメリット ➡︎ 一次知識から導く ➡︎ 余剰資源の活用「安眠効果のあるハーブ」、取引依存の解消「Z社一社依存の解消」

問3設問1の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ 原材料を消費者向け製品に加工し、メーカー向け既存市場から消費者向け新規市場に参入した多角化戦略である。

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問3設問2の解答に盛り込む事項

与件文には「コミュニケーション施策」の記述はない ➡︎ インターネットを活用したコミュニケーション施策について一次知識の正確な理解が問われている

製品作りに顧客の関与を高めるコミュニケーション施策に絞って一次知識を引用 ➡︎ 試供品やのノベリティの配布で顧客の意見や要望を収集してサイトで紹介し、口コミ掲示板を作って顧客同士の情報交換を誘引することで製品の改良や新製品開発に活用。、顧客独自の商品活用方法を募集しサイトで表彰し製品の売り上げアップを図る

問3設問2の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ 試供品やノベリティの配布で製品に対する顧客の意見や要望を収集し、口コミ掲示板を作って顧客同士の自由な情報交換を誘引することで製品の改良や新製品作りに活用し、製品のブランド力を上げて売上に繋げる。

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問4の解答に盛り込む事項

X島宿泊訪問ツアーの立案プログラムの内容が問われている ➡︎ 観光は対象外 ➡︎ 体験型か?

与件文⑨島民の協力を得て ➡︎ ④で島内のイベントや祝いの席や日常の食事を体験 ➡︎ ⑤ハーブ畑での収穫体験 ➡︎ 体験型しかない

問4の解答の下書きメモ

解答例 ➡︎ 島民の協力を得て、主に大都市圏の女性層に対し、①島内での日常やイベントの席での食事を体験してもらい、②ハーブ畑での収穫体験を通してハーブの生命力を体感してもらうことで、島の魅力とB社の魅力を訴求する。

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