中小企業診断士二次試験事例4(平成30)問1

与件文(問題文)はこちら

第1問(配点 24 点)

(設問 1 )

D社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較してD社が優れていると考えられる財務指標を1つ、D社の課題を示すと考えられる財務指標を2つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、その値を⒝欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を①の欄に、課題を示すと考えられる指標を②、③の欄に記入し、⒝欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。

解答上の留意点

(1)D社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行

(2)、優れていると考えられる指標を①の欄に、課題を示すと考えられる指標を②、③の欄に記入 「財務指標」= 会社の財務状態や業績の良し悪しなどを数字で把握・評価するための指標

(3)小数点第 3 位を四捨五入し、単位を明記

解答の手順

(1)収益性、効率性、安全性の財務指標から、ひとつずつ答えを出す問題が多いので、この3つから選択する。

(2)与件文の中から、悪化、改善している財務指標の見当をつける 指標を算出して悪化、改善を確認する

(3)収益性の財務指標候補を選ぶ 「収益性」= 少ない経費で多くの利益を出しているか

1.上記損益計算書から、同業他社との差が大きい科目を探す売上総利益」は優れているが、 営業利益」や「経常利益」は劣るため、「収益性」の評価は分かれる

与件文から指標の根拠になりそうな文章を拾う 与件文の第五段落D社は受注した業務について、協力個人事業主等に業務委託を行うとともに、配送ネットワークに加盟した物流業者に梱包、発送等の業務や顧客への受け渡し、代金回収業務等を委託しており、協力個人事業主等の確保・育成および加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素になっている

与件文の第六段落同社の事業は労働集約的であることから、昨今の人手不足の状況下で、同社は事業計画に合わせて優秀な人材の採用および社員の教育にも注力する方針

⇒ 「D社は受注した業務について、協力個人事業主等に業務委託を行うとともに、配送ネットワークに加盟した物流業者に梱包、発送等の業務や顧客への受け渡し、代金回収業務等を委託しており、協力個人事業主等の確保・育成および加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素になっている」ことが 販売費及び一般管理費」を課題とする根拠と考えられることから、直接影響を受ける「営業利益」を用いた「売上高営業利益率を課題候補とする

D社売上高営業利益率=営業利益18 ÷ 売上高1503 × 100%売上高営業利益率1.198%

他社売上高営業利益率=営業利益59 ÷ 売上高1815 × 100%=売上高営業利益率3.251%

D社の売上高営業利益率1.198%は、他社3.251%に劣るため、売上高営業利益率1.198%を課題に選ぶ

D社の売上高営業利益率1.198%の小数点第3位を四捨五入すると1.20%

※2. 売上高総利益率」を候補にしない理由は、「売上高」が他社に劣りながら「売上原価」が優れている理由を与件文から探せないため。理由は一括大量購入?半完成品購入?探せた場合は「売上原価率」を候補にすべき?

全問解答できるレベルにないので、本試験では迷ったら迷わず後回しにすることが合格の近道

(4)効率性の財務指標候補を選ぶ ⇒ 「効率性」= 少ない資産で多くの売上を出しているか

※1.上記貸借対照表から、他社との差が大きい科目を探す 有形固定資産」の差が大きい

与件文から原因を拾う 与件文の第二段落「2年前に家具・インテリア商材・オフィス什器等の大型品を二人一組で配送し、開梱・組み立て・設置までを全国で行う配送ネットワークを構築

与件文の第六段落D社は顧客企業からの要望に十分対応するために配送ネットワークの強化とともに、協力個人事業主等ならびに自社の支店・営業所の拡大が必要と考えている

配送ネットワークには、自社の支店・営業所が他社よりも多く必要なので、有形固定資産が他社より多いと考えられることから、有形固定資産回転率を課題候補とする

⇒ 有形固定資産回転率=売上高1503 ÷ 有形固定資産8817.080回

他社有形固定資産回転率売上高1815 ÷ 有形固定資産4342.209 回

D社の有形固定資産回転率17.080回は、他社42.209回に劣るため、有形固定資産回転率17.080回を課題に選ぶ

D社の有形固定資産回転率17.080回の小数点第3位を四捨五入すると17.08回

※2. 棚卸資産回転率」を候補にしない理由は、「棚卸資産」が額的に有形固定資産より大きな課題とはいえないから

(5)安全性の財務指標候補を選ぶ 「安全性」= 支払能力は高いか

※1.上記貸借対照表から、他社との差が大きい科目を探す 純資産合計」、「負債合計」が他社より優れている(純資産多い、負債少ない)。資本構造の安定性、超短期の支払い能力とも優れている

与件文から原因を拾う ※与件文の第一段落「顧客企業から受けた要望に応えるための現場における工夫をブラッシュアップし、全社的に共有して一つ一つ事業化を図ってきた

堅調な事業拡大の結果として資本構造の安定性が高く、これが超短期の支払い能力にも貢献していると考えられるので、「自己資本比率を最適な指標候補とする

D社の自己資本比率=純資産合計179 ÷ 負債純資産合計503 × 100%=35.586%

社の自己資本比率=純資産合計74 ÷ 負債純資産合計616 × 100%=12.013%

D社の自己資本比率35.586%は、他社12.013%に優るため、自己資本比率35.586%を選択

D社の自己資本比率35.586%の小数点第3位を四捨五入すると35.59%

※2. 負債比率」を候補にしない理由は、与件文に根拠を見出せないから

(6)(5)の「自己資本比率」が優れた指標であるため、(3)の収益性は課題指標であることが確定し、解答は(7)のとおりとした

(7)答えは青色の財務指標の名称(a)欄と値(b)欄になる。

(a)欄 ① 自己資本比率 (b)欄 35.59(%)

(a)欄 ② 売上高営業利益率 (b)欄 1.20(%)

(a)欄 ③ 有形固定資産回転率 (b)欄 17.08(回)

自己資本=純資産 ー 非支配株主持分 ー 新株予約権として計算

(設問 2)

D社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較してD社が優れている点とD社の課題を50字以内で述べよ。

解答上の留意点

(1)D 社の財政状態および経営成績について 収益性、効率性、安全性の面から

(2)同業他社と比較してD社が優れている点とD社の課題 優れている点と課題を、字数に余裕があれば与件文にある原因を示しながら

(3)50 字以内で述べよ 50字を超えることなく、簡潔に記述する

解答の手順

(1)上記(7)で選んだ収益性、効率性、安全性の面から優れている点と課題を簡潔に記述する

(2)収益性の課題

販売費及び一般管理費の抑制と売上向上

(3)効率性の課題

配送ネットワークの効率化と売上向上

(4)安全性の優れている点

資本構造の安全性が高い

(5)解答例60点狙い。模範解答ではない

解答例:50文字

優れている点は資本構造の安全性。課題は販管費の抑制と配送ネットワークの効率化による売上の向上である。

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