中小企業診断士二次試験事例4(平成30)問2

与件文(問題文)はこちら

第2問(配点 31 点)


D社は今年度の初めにF社を吸収合併し、インテリアのトータルサポート事業のサービスを拡充した。今年度の実績から、この吸収合併の効果を評価することになった。以下の設問に答えよ。なお、利益に対する税率は30%である。

(設問 1 )
吸収合併によってD社が取得したF社の資産及び負債は次のとおりであった。

今年度の財務諸表をもとに①加重平均資本コスト(WACC)と、②吸収合併により増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、株主資本に対する資本コストは 8 %、負債に対する資本コストは1%とする。また、⒜欄の値については小数点第 3 位を四捨五入すること。

解答上の留意点

(1)今年度の財務諸表をもとに加重平均資本コスト(WACC)計算過程も合わせて解答

(2)今年度の初めにF社を吸収合併したことにより増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー計算過程も合わせて解答

(3)%表示で小数点第 3 位を四捨五入

解答の手順

※1.加重平均資本コスト(WACC)=負債合計/負債・純資産合計 × 負債に対する資本コスト(%) × (1 – 税率) + 株主資本/負債・純資産合計 × 株主資本に対する資本コスト(%)× 100(%)一次試験レベルの単純な計算問題

(1)※1に数値を代入して計算式を明示する ⇒ 負債合計324/負債・純資産合計503 × 負債に対する資本コスト1(%) × (1 – 税率0.3) + 株主資本179/負債・純資産合計503 × 株主資本に対する資本コスト8(%)

(2)数字の単位は与件文から容易に確認できるので、解答に用いる計算式は単位のない四則演算にしたが減点されるかは未確認324/503×1×0.7+179/503×8 = 3.30

※2.吸収合併により増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー = 負債の債権者や株主が求めるリターン最低額 = 増加した資産 × 加重平均資本コスト(%) ⇒ この場合の「加重平均資本コスト」は「期待利益率」になる。計算式は一次試験レベル

(1)※1に数値を代入して計算式を明示する ⇒ 増加した資産190 × 加重平均コスト3.30

(2)与件文から容易に確認できる数字の単位は省略し、解答に用いる計算式は単位のない四則演算にしたが減点されるかは未確認(3.30は単位がないと誤りになるので付加)190 × 3.30% = 6.27

※3.解答例

(a)欄 3.30% (b)欄 324/503×1×0.7+179/503×8 = 3.30

(a)欄 6.27百万円 (b)欄 190 × 3.30% = 6.27

********************

(設問 2 )
インテリアのトータルサポート事業のうち、吸収合併により拡充されたサービスの営業損益に関する現金収支と非資金費用は次のとおりであった。

企業価値の増減を示すために、吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位: 百万円)を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。⒜欄の値については小数点第3位を四捨五入すること。また、吸収合併によるインテリアのトータルサポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問1)で求めた値も用いて理由を示して⒞欄に70字以内で述べよ。なお、運転資本の増減は考慮しない。

解答上の留意点

(1)吸収合併により拡充されたサービスの営業損益に関する現金収支と非資金費用により増加したキャッシュフロー(単位: 百万円)計算過程を含めて解答

(2)(設問1)で求めた値も用い理由を示して⒞欄に70字以内で述べよ

(3)百万円未満を四捨五入

(4)運転資本の増減は考慮しない ⇒ フリーキャッシュフロー = 営業利益 × (1-法人税率) + 減価償却費 - 運転資本増加額 - 設備投資額 現金収入400でつなぎ資金の有無は考えなくて良い、いう意味?

解答の手順

※1.キャッシュフロー = 税引き後利益 + 非資金費用

(1)※1に数値を代入して計算式を明示する ⇒ (現金収入400 ー 現金支出395 ー 非資金費用1)× (1 ー 0.3)+ 非資金費用1

(2)与件文から容易に確認できる数字の単位は省略し、解答に用いる計算式は単位のない四則演算にしたが減点されるかは未確認(400 ー 395 ー 1)×(1ー0.3)+ 1 = 3.80

(3)設問1で要求されるキャッシュフローは6.27百万円、実際に増加したキャッシュフローは3.80百万円 ⇒ 実際のキャッシュフローが要求されたキャッシュフローを下回るため、企業価値の向上につながっていない

(4) 解答例(文字数68) ⇒ 要求されるキャッシュフローは6.27百万円、実際に増加したキャッシュフローは3.80百万円であるため、企業価値の向上につながっていない。

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(設問 3 )
(設問2)で求めたキャッシュフローが将来にわたって一定率で成長するものとする。その場合、キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の金額に一致するのは、キャッシュフローが毎年度何パーセント成長するときか。キャッシュフローの成長率を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、⒜欄の成長率については小数点第3位を四捨五入すること。

解答上の留意点

(1)キャッシュフローが将来にわたって一定率で成長する 3.80は年度末の金額

(2)キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の金額に一致 190は年度初めの金額

(3)本問における「キャッシュフローの現在価値合計」の現在とは、190が発生した吸収合併時の本年度初め、と考えたが年度末(190 + 3.80=193.8)を現在価値と解するのが多数派の模様?

(4)最終的な解答において%表示で小数点第 3 位を四捨五入

解答の手順

※1. 企業価値 = CF / (r – g) CF:1年後のCF r:割引率(本問ではWACC) g:成長率 ⇒ 一次試験では、この公式しか出てこないので採用した ⇒ 永遠に成長するので現実的ではないと思うが…

(1)※1に数値を代入して計算式を明示する ⇒ 次年度キャッシュフロー 3.80 / (割引率 0.033 ー g)

(2)与件文から容易に確認できる数字の単位は省略し、解答に用いる計算式は単位のない四則演算にしたが減点されるかは未確認3.80 /(0.033 ー g)= 190 g =(6.27 ー 3.80)/ 190 =1.30 %

※3. 解答例

⒜欄 1.30 %

⒝欄 キャッシュフローの成長率をgとすると、3.80 /(0.033 ー g)= 190 g =(6.27 ー 3.80)/ 190 =1.30 %

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