中小企業診断士二次試験事例4(平成29)問3

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第3問(配点29 点)

(設問 1 )

染色関連事業の収益性を改善するために、設備更新案を検討中である。以下に示す設備更新案にもとづいて、第X1年度末の差額キャッシュフロー(キャッシュフローの改善額)を解答欄に従って計算したうえで、各年度の差額キャッシュフローを示せ。なお、利益に対する税率は30%、更新設備の利用期間においては十分な利益が得られるものとする。また、マイナスの場合にはを付し、最終的な解答において百万円未満を四捨五入すること。

<設備更新案>
第X1年度初めに旧機械設備に代えて汎用機械設備を導入する。これによって、従来の染色加工を高速に行えることに加えて、余裕時間を利用して新技術による染色加工を行うことができる。

旧機械設備を新機械設備(初期投資額200百万円、耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)に取り換える場合、旧機械設備(帳簿価額50百万円、残存耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)の処分のために10百万円の支出が必要となる(初期投資と処分のための支出は第X1年度初めに、旧機械設備の除却損の税金への影響は第X1年度末に生じるものとする)。設備の更新による現金収支を伴う、年間の収益と費用の変化は以下のように予想されている(現金収支は各年度末に生じるものとする)。

なお、耐用年数経過後年後の設備処分支出は、旧機械設備と新機械設備ともに百万円であり、この支出および税金への影響は第X5年度末に生じるものとする。

解答上の留意点

(1)第X1年度末の差額キャッシュフロー(キャッシュフローの改善額)を解答欄に従って計算したうえで、各年度の差額キャッシュフローを示 「差額」とは旧機械設備で運用した場合との差額

(2)利益に対する税率は30%

(3)更新設備の利用期間においては十分な利益が得られるものとする

(4)マイナスの場合にはを付

(5)最終的な解答において百万円未満を四捨五入

(6)「なお、耐用年数経過後年後の設備処分支出は、旧機械設備と新機械設備ともに百万円であり、この支出および税金への影響は第X5年度末に生じるものとする。 「旧設備」継続使用でもX5末には廃棄処分と理解。新設備も同じ。

解答の手順

※1. 第X1年度初めの差額キャッシュフロー(キャッシュフローの改善額)

(1)新規設備の「初期投資と処分のための支出は第X1年度初めに」行う 初期投資200旧機械設備処分費10

(2)旧設備では第X1年度初めに支出に関する記載が無いので キャッシュフローの増減は無し

(3)X1年度初めの差額キャッシュフロー = 新規分(初期投資200 + 旧機械設備処分費10 )ー 旧設備分 0 = △210現金が減る科目なので符号はマイナス

※2. 第X1年度末の差額キャッシュフロー(キャッシュフローの改善額)

(1)新機械設備(初期投資額200百万円、耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)の減価償却費 = 200 ÷ 5 = 40

(2)旧機械設備の除却損の税金への影響は第X1年度末に生じる除却損 = 除却時の帳簿価額 ー 残存価額 0 + 旧機械設備処分費10 50 ー 0 + 10 = 60

(3)新機械設備の現金収支 = 収益 ー 費用 = (520 + 60)ー(330 + 40) = 210

(4)新機械設備の税引前当期損益 = 収益 ー 費用 ー 非現金支出科目 = (520 + 60)ー(330 + 40)ー(40 + 60) = 110

(5)新機械設備の税金支出額 = 税引前当期利益 × 0.3 = 110 × 0.3 = 33

(6)新機械設備の税引後利益 = 税引前当期利益 × 税金支出額 = 110 ー 33 = 77

(7)旧機械設備(帳簿価額50百万円、残存耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)の減価償却費 = 50 ÷ 5 = 10

(8)旧機械設備の現金収支 = 収益 ー 費用 = 520 ー 380 = 210

(9)旧機械設備の税引前当期損益 = 収益 ー 費用 ー 非現金支出科目520 ー 380 ー 10 = 130

(10)旧機械設備の税金支出額 = 税引前当期利益 × 0.3 = 130 × 0.3 = 39

(11)旧機械設備の税引後利益 = 税引前当期利益 × 税金支出額 = 130 ー 39 = 91

(12)税引前利益の差額 = (4)ー(9)= 110 ー 130 = △20

(13)税金支出の差額 = (5)ー(10)= 33 ー 39 = △6

(14)税引後利益の差額 = (6)ー(11)= 77 ー 91 = △14

(15)非現金支出項目の差額 = (4)ー(7)= 100 ー 10 = 90

(16)第X1年度末の差額キャッシュフロー =税引後利益の差額△14+ 非現金支出項目の差額 90 76

※3. 第X1年度初めの差額キャッシュフロー

(1)※1. (3) = △210

※4. 第X1年度末の差額キャッシュフロー

(1)※2. (16) = 76

※5. 第X2〜5年度末の差額キャッシュフロー

(1)新機械設備(初期投資額200百万円、耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)の減価償却費 = 200 ÷ 5 = 40

(2)新機械設備の税引前当期損益 = 収益 ー 費用 ー 非現金支出科目 = (520 + 60)ー(330 + 40)ー 40 = 170X5末は処分費10増なので160

(3)新機械設備の税引後当期損益 = 税引前当期損益 × (1−0.3)170 × 0.7 =119(X5末は160×0.7=112

(4)旧機械設備(帳簿価額50百万円、耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)の減価償却費 = 50 ÷ 5 = 10

(5)旧機械設備の税引前当期損益 = 収益 ー 費用 ー 非現金支出科目 = 520 ー 380 ー 10 = 130(X5末は処分費10増なので120

(6)旧機械設備の税引後利益 = 税引前当期利益 × 税金支出額 = 130 ー 39 = 91(X5末は120×0.7=84

(7)第X2〜5年度末の差額キャッシュフロー = (3)ー(6)+ ※2.(1)ー ※2.(7) = 119 ー 91 + 40 ー 10 = 58(X5末は112 ー 84 + 40 ー 10 = 58

※6. 解答例 ※1〜※5の青字参照

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(設問 2 )

この案の採否を検討する際に考慮するべき代表的な指標を安全性と収益性の観点から1つずつ計算し、収益性の観点から採否を決定せよ。資本コストは7%である。なお、解答にあたっては、以下の複利現価係数を利用し、最終的な解答の単位における小数点第3位を四捨五入すること。

解答上の留意点

(1)「この案の採_否を検討する際に考慮するべき代表的な指標を安全性と収益性の観点から1つずつ計算 投資の可否を安全性と収益性の観点から検討する場合、安全性= 投資を早期に回収できる回収期間法、収益性= 得られるCFの現在価値の大きさで判断するを正味現在価値法

(2)「収益性の観点から採否を決定 正味現在価値で採否を決定

(3)「解答にあたっては、以下の複利現価係数を利用 複利現価係数を利用 = 現在価値に割引けという意味なので、回収期間法割引回収期間法 で計算

(4)「最終的な解答の単位における小数点第3位を四捨五入

解答の手順

※1. X1〜5の正味現在価値を計算 正味現在価値 = 各年のCF × 各年の福利現価係数

(1) X1年度末の正味現在価値 = 76 × 0.9346 =71.0296

(2) X2年度末の正味現在価値 = 58 × 0.8734 = 50.6572

(3) X3年度末の正味現在価値 = 58 × 0.8163 = 47.3454

(4) X4年度末の正味現在価値 = 58 × 0.7629 = 44.2482

(5) X5年度末の正味現在価値 = 58 × 0.7130 = 41.354

(6) X1〜5年度の正味現在価値 = 71.0296 + 50.6572 + 47.3454 + 44.2482 + 41.354 = 254.6344

(7) 投資によって得られる収益 = 254.6344 ー 210(投資額 + 旧機械設備処分費)=44.6344 ≒ 44.63

※2. 割引回収期間法で投資額(=投資額 + 旧機械設備処分費)を回収できる年数を計算 ⇒ 正味現在価値の累計が投資額を超える年度を確認

(1) ※1の(6)から、210 71.0296 + 50.6572 + 47.3454 + 44.2482 = 213.2804

(2) 回収年数 = 3年 +(210 ー 71.0296 ー 50.6572 ー 47.3454 = 40.9678)/ 44.2482 = 3 + 0.9258… ≒ 3.93年

※3. 解答例

(1)安全性: ※2の(2) 3.93年 収益性: ※1の(7) 44.63百万円 収益性の観点からは回収できるので採用する

(2)別解がいくつかあるが、省略

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