中小企業診断士二次試験事例4(令和3)問2

与件文(問題文)はこちら

第2問(配点 30点)

D社はこれまで、各店舗のレジを法定耐用年数に従って5年ごとに更新してきたが、現在保有しているセミセルフレジ100台を2022年度期首にフルセルフレジへと取り替えることを検討している。またD社は、この検討において取替投資を行わないという結論に至った場合には、現在使用しているセミセルフレジと取得原価および耐用期間が等しいセミセルフレジへ2023年度期首に更新する予定である。

現在使用中のセミセルフレジは、2018年度期首に1台につき100万円で購入し有人レジから更新したもので、定額法で減価償却(耐用年数5年、残存価額0円)されており、2022年度期首に取り替える場合には耐用年数を1年残すことになる。一方、 更新を検討しているフルセルフレジは付随費用込みで1台当たり210万円の価格であるが、耐用期間が6年と既存レジの耐用年数より1年長く使用できる。D社はフルセルフレジに更新した場合、減価償却においては法定耐用年数にかかわらず耐用期間に合わせて耐用年数6年、残存価額0円の定額法で処理する予定である。また、レジ更新に際して現在保有しているセミセルフレジは1台当たり8万円で下取りされ、フルセルフレジの代価から差し引かれることになっている。

D社ではフルセルフレジへと更新することにより、D社全体で人件費が毎年2,500万円削減されると見込んでいる。なお、D社の全社的利益(課税所得)は今後も黒字であることが予測されており、利益に対する税率は30%である。

(設問 1 )
D社が2023年度期首でのセミセルフレジの更新ではなく、2022年度期首にフルセルフレジへと取替投資を行った場合の、初期投資額を除いた2022年度中のキャッシュフローを計算し、⒜欄に答えよ(単位:円)。なお、⒝欄には計算過程を示すこと。ただし、レジの取替は2022年度期首に全店舗一斉更新を予定している。また、初期投資額は期首に支出し、それ以外のキャッシュフローは年度末に一括して生じるものとする。

解答上の注意点

(1)初期投資額を除いた2022年度中のキャッシュフローを計算100台1台210万円、耐用期間6年、残存価額0円、定額法で処理

(2)レジ更新に際して現在保有しているセミセルフレジは1台当たり8万円で下取りされ、フルセルフレジの代価から差し引かれる除却損が出る

(3)フルセルフレジへと更新することにより、D社全体で人件費が毎年2,500万円削減されると見込んでいる

(4)D社の全社的利益(課税所得)は今後も黒字であることが予測されており、利益に対する税率は30%

(5)初期投資額は期首に支出し、それ以外のキャッシュフローは年度末に一括して生じる

(6)⒝欄には計算過程を示す

(7)(単位:円)問題文中の単位は万円

(8)セミセルフレジを使用し続けた場合の2022年度中のキャッシュフローとの差額を考慮するのか不明。設問2との関係から本問でも差額を考慮し、差額CFを答えた。

解答の手順

※1. 初期投資額を除いた年度中のキャッシュフローを計算キャッシュフローは年度末に一括して生じる

(1)現在使用中のセミセルフレジは、2018年度期首に1台につき100万円で購入し有人レジから更新したもので、定額法で減価償却(耐用年数5年、残存価額0円) 減価償却費= 100 ÷ 5 × 100台 = 2000 これが2022年度中のCFになる。人件費以外2021年度と同額が前提

(2)現在使用中のセミセルフレジの除却損 ⇒ 期首残存額(10000 ー 8000)ー 下取り額(8 × 100)= 除却損 1200

(3)フルセルフレジ100台1台210万円、耐用期間6年、残存価額0円、定額法で処理セミセルフレジの減価償却費をフルセルフレジの減価償却費から差し引く 減価償却費= 210 ÷ 6 × 100台 = 3500 ⇒ 3500 ー 2000 =1500

(4)D社ではフルセルフレジへと更新することにより、D社全体で人件費が毎年2,500万円削減

(5)2022年度末の差額CF = (2500 ー 1500 ー 1200)× 0.7 + 1500 + 1200 = 2560

(6)単位が円なので、答えは 25600000円

※2. 解答例 上記※1(5)〜(6)のとおり

********************

(設問 2 )
当該取替投資案の採否を現在価値法に従って判定せよ。計算過程も示して、計算結果とともに判定結果を答えよ。なお、割引率は6%であり、以下の現価係数を使用して計算すること。

解答上の注意点

(1)当該取替投資案の採否を現在価値法に従って判定

解答の手順

※1. ※1. フルセルフレジ案の現在価値

(1)2022当初フルセルフレジ導入 ⇒(-210 + 8)× 100台 = -20200(投資額)

(2)2022期末:フルセルフレジCF ⇒ 2560(設問1の答え)+ 10000( セミフルレジの投資額の支払いを免れるため加算)= 12560

(3)2023〜2027期末:フルセルフレジCF 減価償却費= 210 ÷6 × 100台 = 3500 ⇒ 3500 ー 2000(セミフルの減価償却費) =1500

(3)2024〜2027期末:フルセルフレジCF ⇒ (2500 ー 1500)× 0.7 + 1500 = 2200

(4)フルセルフレジCFの正味現在価値 ⇒ 12560 × 0.943 + 2200 ×(0.890 + 0.840 + 0.792 + 0.747 + 0.705)ー 20200 = 386.88

(5)単位が円なので、答えは 3868800円

※2. 解答例 上記※1(1)〜(5)のとおり

********************

(設問 3 )
当該取替投資案を検討する中で、D社の主要顧客が高齢化していることやレジが有人であることのメリットなどが話題となり、フルセルフレジの普及を待って更新を行うべきとの意見があがった。今回購入予定のフルセルフレジを1年延期した場合の影響について調べたところ、使用期間が1年短くなってしまうものの基本的な性能に大きな陳腐化はなく、人件費の削減も同等の2,500万円が見込まれることが分かった。また、フルセルフレジの導入を遅らせることについて業者と交渉を行った結果、更新を1年遅らせた場合には現在保有するセミセルフレジの下取り価格が0円となるものの、フルセルフレジを値引きしてくれることになった。

取替投資を1年延期し2023年度期首に更新する場合、フルセルフレジが1台当たりいくら(付随費用込み)で購入できれば1年延期しない場合より有利になるか計算し、⒜欄に答えよ(単位:円)。なお、⒝欄には計算過程を示すこと。ただし、更新されるフルセルフレジは耐用年数5年、残存価額0円、定額法で減価償却する予定である。また、最終的な解答では小数点以下を切り捨てすること。

解答上の注意点

(1)取替投資を1年延期し2023年度期首に更新する場合、フルセルフレジが1台当たりいくら(付随費用込み)で購入できれば1年延期しない場合より有利になるか計算

(2)更新されるフルセルフレジは耐用年数5年、残存価額0円、定額法

解答の手順

※1. ※1. 1年延期しない場合より有利になるか計算

(1)フルセルフレジ1台当たりの購入額をg とする

(2)2022期末 -g × 100 + 10000( セミフルレジの投資額の支払いを免れるため加算)= -100g + 10000

(2)フルセルフレジ減価償却費 ⇒ g × 100台 ÷ 5 =20g20g ー 2000(セミフルの減価償却費)

(3)2023期末:フルセルフレジCF ⇒ (2500 ー 20g + 2000)× 0.7 + 20g ー 2000 = 6g + 1150

(4)フルセルフレジCFの正味現在価値 ⇒ (-100g + 10000)× 0.943 +(6g + 1150)×( 0.890 + 0.840 + 0.792 + 0.747 + 0.705)> 386.88

(5)フルセルフレジCFの正味現在価値 ⇒ g > 193.2159078 ≒ 1932159 円

※2. 解答例 上記※1(1)〜(5)のとおり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*

CAPTCHA