中小企業診断士二次試験事例1(令和02)問1

与件文(問題文)はこちら

第1問(配点40点)

以下は、老舗蔵元A 社を買収する段階で、企業グループを経営する地元の有力実業家であるA 社長の祖父に関する設問である。各設問に答えよ。

(設問1)

A 社の経営権を獲得する際に、A 社長の祖父は、どのような経営ビジョンを描いていたと考えられるか。100 字以内で答えよ。

解答上の留意点

(1)「A 社長の祖父は」 ⇒ 与件文の第四段落「最終的に友好的買収を決断したこの有力者は、飲食業を皮切りに事業をスタートさせ次々と店舗開拓に成功しただけでなく、30 年ほど前には地元の旅館を買収して娘を女将にすると、全国でも有名な高級旅館へと発展させた実業家である。」⇒ M&A経験者

(2)「A 社の経営権を獲得する際に ⇒ 与件文の第五段落「インバウンドブームの前兆期ともいえる当時、日本の文化や伝統に憧れる来訪者にとっても、200 年の年月に裏打ちされた老舗ブランドは魅力的であるし、それが地域の活性化につながっていくといった確信が買収を後押しした」⇒ M&Aのメリット新規事業への参入、既存事業の強化、スケールメリットの獲得

(3)「どのような経営ビジョンを描いていたと考えられるか」経営ビジョンとは ⇒ 企業の将来像や進むべき方向性

(4)「100字以内」 ⇒ 100字を超えてはいけないことに注意

解答の手順

※1. どのような経営ビジョンを描いていたと考えられるか

(1) 与件文の第四段落「最終的に友好的買収を決断したこの有力者は、飲食業を皮切りに事業をスタートさせ次々と店舗開拓に成功しただけでなく、30 年ほど前には地元の旅館を買収して娘を女将にすると、全国でも有名な高級旅館へと発展させた実業家である。」 ⇒ M&Aによる企業拡大を成功させた経験(新事業への進出実績)

(2) 与件文の第十段落「レストラン事業と土産物販売事業は責任者たちが手腕を発揮してくれたことに加えて、旅館などグループ企業からの営業支援もあって、インバウンドの追い風に乗って順調に売上を伸ばしていった。」 ⇒ M&Aによって企業間シナジーを成功させた

(3)与件文の第五段落「インバウンドブームの前兆期ともいえる当時、日本の文化や伝統に憧れる来訪者にとっても、200 年の年月に裏打ちされた老舗ブランドは魅力的であるし、それが地域の活性化につながっていくといった確信が買収を後押ししたのである。」 ⇒ 老舗ブランドの魅力を利用して自社の企業拡大が実現すれば、同時に地域の活性化につながっていくという確信

※2. 解答例(101/100文字)⇒ 経営ビジョンは、企業グループの経営を拡大させることで地域の活性化も図ることである。理由は、インバウンドブームに乗って老舗のブランド力が集客力を生み、企業間や地域経済との相乗効果を生むと考えたからである。

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(設問2)

A 社長の祖父がA 社の買収に当たって、前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由は何か。100 字以内で答えよ。

解答上の留意点

(1)「前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由」 ⇒ M&Aのメリット

(2)「100字以内」 ⇒ 100字を超えてはいけないことに注意

解答の手順

※1. 前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由

(1) 与件文の第五段落「インバウンドブームの前兆期ともいえる当時、日本の文化や伝統に憧れる来訪者にとっても、200 年の年月に裏打ちされた老舗ブランドは魅力的であるし、それが地域の活性化につながっていくといった確信が買収を後押ししたのである。」 ⇒ インバウンドブームに間に合わせるためには、買収事業の円滑な営業移行が必要なので、買収した企業の人材を受け継いだ

(2) 与件文の第六段落「幼少時から祖父の跡を継ぐことを運命づけられ、自らも違和感なく育ってきたA社長は金融機関を退職し帰郷した。経営実務の師となる祖父の下で、3 年近くに及ぶ修行がスタートした。酒造りは、経営顧問と杜氏、そしてベテランの蔵人たちから学んだ。」 ⇒ 事業承継を円滑に進めるために、老舗ブランドの人的技術的ノウハウを直接次代の経営者に学ばせようと考えた

※2. 解答例(100/100文字)⇒ 理由は、①買収企業から円滑な事業移行を行うため優秀な人材を同時に承継し、②優秀な人材から人的技術的ノウハウを直接次代の経営者に学ばせることで、自社グループの規模の拡大と地域経済の活性化の発展を図った。

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