中小企業診断士二次試験事例3(令和03・解答手順)

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでC社の業種を確認 0.5分

一行目冒頭に「C社は、革製のメンズおよびレディースバッグを製造、販売する中小企業」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入 10分

手順5:与件文を読み、各設問の解答として引用する箇所に設問と同じ色のマーカーを塗る 10分

SWOT分析結果の与件文にマーカーをすると逆に判別し辛いので省略した。

与件文

【C社の概要】

C社は、革製のメンズおよびレディースバッグを製造、販売する中小企業である。資本金は2,500万円、従業員は総務・経理部門5名、製品デザイン部門5名、製造部門40名の合計50名である。

バッグを製造する他の中小企業同様、C社はバッグメーカーX社の縫製加工の一部を請け負う下請企業として創業した。そして徐々に加工工程の拡大と加工技術の向上を進め、X社が企画・デザインした製品の完成品までの一貫受託生産Sができるようになり、X社の商品アイテム数の拡大も加わって生産量も増大した。しかしその後、X社がコストの削減策として東南アジアの企業に生産を委託したことから生産量が減少し、その対策として他のバッグメーカーとの取引を拡大することで生産量を確保してきた。現在バッグメーカー4社から計10アイテムの生産委託を受けており、受注量は多いものの低価格品が主Wとなっている。

C社では、バッグメーカーとの取引を拡大するとともに、製品デザイン部門を新設し、自社ブランド製品の企画・開発、販売を進めてきた。その自社ブランド製品が旅行雑誌で特集されて、手作り感のある高級仕様が注目された。高価格品であったが生産能力を上回る注文を受けた経験があり、自社ブランド化を推進する契機となった。さらに、その旅行雑誌を見たバッグ小売店数社からC社ブランド製品の引き合いがあり、販売数量は少ないものの小売店との取引も始められた。一方でC社独自のウェブサイトを立ち上げ、インターネットによるオンライン販売も開始し、今では自社ブランド製品販売の中心となっている。現在自社ブランド製品は25アイテム、C社売上高の20%程度ではあるが、収益に貢献している。S

【自社ブランド製品と今後の事業戦略】

C社の自社ブランド製品は、天然素材のなめし革を材料にして、熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品Sである。その企画・開発コンセプトは、「永く愛着を持って使えるバッグ」であり、そのため自社ブランド製品の修理も行っている。S新製品は、インターネットのオンライン販売情報などを活用して企画している。C社社長は今後、大都市の百貨店や商業ビルに直営店を開設して、自社ブランド製品の販売を拡大しようと検討している。ただ、製品デザイン部門には新製品の企画・開発経験が少ないことに不安がある。また、製造部門の対応にも懸念を抱いている。W

【生産の現状】

生産管理担当者は、バッグメーカーの他、小売店およびインターネットからの注文受付や自社ブランド製品の修理受付の窓口でもあり、それらの製造および修理の生産計画の立案、包装・出荷担当への出荷指示なども行っている。生産計画は月1回作成し、月末の生産会議で各工程のリーダーに伝達されるが、計画立案後の受注内容の変動や特急品の割込みによって月内でもその都度変更される。W

生産は、バッグメーカーから受託する受注生産が主であり、1回の受注量は年々小ロット化している。生産管理担当者は、繰り返し受注を見越して、受注量よりも多いロットサイズで生産を計画し、納品量以外は在庫保有している。W

バッグ小売店やインターネットで販売する自社ブランド製品は、生産管理担当者が受注予測を立てて生産計画を作成し、見込生産している。注文ごとに在庫から引き当てるものの、欠品や過剰在庫が生じることがある。W

受注後の製造工程は、裁断、縫製、仕上げ、検品、包装・出荷の5工程である。裁断工程では、材料の革をパーツごとに型で抜き取る作業を行っており、C社内の製造工程では一番機械化されている。その他に、材料や付属部品などの資材発注と在庫管理も裁断工程のリーダーが担当する。生産計画に基づき発注業務を行うが、発注から納品までの期間が1カ月を超える資材もあり、資材欠品が生じた場合、生産計画の変更が必要となる。W

C社製造工程では一番多くの熟練職人6名が配置されている縫製工程は、裁断された革を組み立てて成形する作業を行う。通常はバッグメーカーからの受託生産品の縫製作業が中心で、裁断済みパーツの部分縫製とそれを組み合わせて製品形状にする全体縫製との作業に大きく分かれ、全体縫製では部分縫製よりも熟練を要する。自社ブランド製品の生産が計画されると、熟練職人は受託生産品の作業から自社ブランド製品の作業へ移る。自社ブランド製品は、部分縫製から立体的形状を要求される全体縫製のすべてを一人で製品ごとに熟練職人が担当し、そのほとんどの作業は丁寧な手縫い作業(手作業)で行われる。自社ブランド製品の縫製工程を担当した熟練職人は、引き続き仕上げ工程についても作業を行い、製品完成まで担当している。各作業者の作業割り当ては、縫製工程のリーダーが各作業者の熟練度を考慮して決めている。縫製工程は、自社ブランド製品の修理作業も担当しており、C社製造工程中最も負荷が大きく時間を要する工程となっている。W

仕上げ工程は、縫製されたバッグメーカーからの受託生産品の裁断断面の処理、付属金物の取り付けなどを行う製造の最終工程を担当し、縫製工程同様手作業が多く、熟練を要する。

縫製、仕上げ両工程では、熟練職人の高齢化が進み、今後退職が予定されているため、若手職人の養成を行っている。その方法として、細分化した作業分担制で担当作業の習熟を図ろうとしているが、バッグを一人で製品化するために必要な製造全体の技術習熟が進んでいない。W

検品工程では製品の最終検査を行っているが、製品の出来栄えのばらつきが発生した場合、手直し作業も担当する。

包装・出荷工程は、完成した製品の包装、在庫管理、出荷業務を担当する。

手順2:各設問文を読んで解答に必要な5W2Hを確認しアンダーライン 4.5分

手順4:各設問文を読んで、与件文から解答を探さなければいけない文言箇所にマーカーで色塗り(設問別に色分け) 5分

手順6:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 5分

問1のSWOT分析から、第2問で受託生産品製造工程の効率化の課題と対応策を、第3問で自社ブランド製品開発の企画面と生産面の課題、第4問で対応策を問われているので、順序よく解答する。

第1問(配点20点)

解答例はこちら

革製バッグ業界におけるC社の⒜強みと⒝弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。

第2問(配点30点)

解答例はこちら

バッグメーカーからの受託生産品の製造工程について、効率化を進める上で必要な⒜課題2つを20字以内で挙げ、それぞれの⒝対応策を80字以内で助言せよ。

第3問(配点20点)

解答例はこちら

C社社長は、自社ブランド製品の開発強化を検討している。この計画を実現するための製品企画面と生産面の課題を120字以内で述べよ。

第4問(配点30点)

解答例はこちら

C社社長は、直営店事業を展開する上で、自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出すか、それとも若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテム数を増やすか、悩んでいる。C社の経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るためには、どちらを選びどのように対応するべきか、中小企業診断士として140字以内で助言せよ。

手順7:解答の作成 45分

問1の解答に盛り込む事項

「業界における➡︎ 与件文②「バッグを製造する他の中小企業同様、C社はバッグメーカーX社の縫製加工の一部を請け負う下請企業として創業した」➡︎ 業界は縫製加工の一部を請け負う下請企業

S(強み)➡︎ 与件文②一貫受託生産ができる ➡︎ ③インターネット販売 ➡︎ ④天然素材のなめし革を材料に手作りした自社ブランドの高級品 ➡︎④自社製品の修理 ➡︎

(a)Sの解答例① ➡︎ 一貫受託生産、自社ブランド手作り高級バッグのネット販売と自社製品の修理サービス。

W(弱み)➡︎ 与件文②受託生産は受注量は多いが低価格 ➡︎ ④製品デザイン部門は新規開発の経験少ない ➡︎ ④生産計画の精度が低い ➡︎ ⑥受託生産は受注量より多いロット数が多く在庫保有 ➡︎ ⑦自社ブランド製品は見込み生産の精度が低い ➡︎ ⑧納期に一ヶ月長の資材あるも生産計画は月単位 ➡︎ ⑪熟練工への依存と負担が大きい

(b)Wの解答例② ➡︎ 低単価の受託生産、低精度の生産計画、新規開発の経験不足、熟練工への依存と負担過多。

問1の解答の下書きメモ

文字数が40字いないと短いので、与件文の羅列では収まらない。よって、優先順位をつけ短い文章で羅列した

解答例 ➡︎ 上記SWの(a)、(b)

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問2の解答に盛り込む事項

受託生産の製造工程での効率化の課題と対応策

課題 ➡︎ 問1の(b)の表現を、問題点から受託生産の、製造過程の、効率化の課題、に表現を変える ➡︎ 効率化の課題 ➡︎ 製造工程の自動化と外注化を促進して余剰生産を防ぐ、若手の技術力アップで作業時間の短縮化と不良品を減らす

対応策 ➡︎ 製造工程の自動化と外注化を促進して余剰生産を防ぐ、若手の技術力アップで作業時間の短縮化と不良品を減らす

問2の解答の下書きメモ

(a1)解答例 ➡︎ 各工程の自動化、包装・出荷工程の外注化。

(a2)解答例 ➡︎ 縫製、仕上げ工程で若手の熟練工化を図る。

(b1)解答例 ➡︎ 若手工が中心の受託生産では、作業の遅れを余剰生産でカバーしている状況であり、各工程の自動化、包装・出荷工程の外注化を促進し、納期遅れが生じない対策が必要である

(b2)解答例 ➡︎ 縫製、仕上げ工程は熟練を要する作業であるが、熟練度に応じた割り当てでは若手工の習熟度は上がらないため、熟練工が指導するOJTを実施して育成を急ぐ必要がある。

※※※※※※※

問3の解答に盛り込む事項

自社ブランド製品の開発強化 ➡︎ 製品企画面と生産面の課題

製品企画面と生産面の課題

製品企画面の課題 ➡︎ 与件文④開発経験不足 ➡︎ ④「新製品は、インターネットのオンライン販売情報などを活用して企画」= 販売情報だけでなく、修理情報や顧客のニーズや要望などの情報も活用うることで、需要に即した新製品開発が可能になる

生産面の課題 ➡︎ 与件文④製造部門の対応に懸念 ➡︎ ⑤「生産管理担当者は、…小売店およびインターネットからの注文受付や自社ブランド製品の修理受付の窓口でもあり、それらの製造および修理の生産計画の立案…なども行っている。」➡︎ ⑤「生産計画は月1回作成し、月末の生産会議で各工程のリーダーに伝達される」➡︎ ⑧「材料や付属部品などの資材発注と在庫管理も裁断工程のリーダーが担当」= 在庫情報無しの生産計画なので、資材の納期遅延、製品の欠品、在庫過多は製品の開発強化に比例して悪化する

問3の解答下書きメモ

製品企画面の課題 ➡︎ 販売情報だけでなく、修理情報や顧客のニーズや要望などの情報も活用うることで、需要に即した新製品開発の経験値を上げることである。

生産面の課題 ➡︎ 在庫情報を盛り込んだ生産計画とすることで、製品開発を強化しても資材の納期遅延、製品の欠品、在庫過多を抑えることである。

解答例 ➡︎ ①販売情報の他に修理情報や顧客ニーズ等の情報も活用して、新製品開発の経験値を上げることが製品企画面の課題、②在庫情報を加味した生産計画を作成し、製品開発の強化で資材の納期遅延、製品の欠品、在庫過多を生じさせないことが生産面での課題である。

※※※※※※※

問4の解答に盛り込む事項

注意点 ➡︎ 「自社ブランド製品」だけに関する問題 ➡︎ 問3の課題解決問題

選択問題 ➡︎ 「自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出す」又は「若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテム数を増やす」か、悩んでいる。C社の経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るためには、どちらを選びどのように対応するべきか

選択条件 ➡︎ 「C社の経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るためには、どちらを選びどのように対応するべき」= 経営資源を活用し最大の効果を得る方策

経営資源 ➡︎ 与件文④「C社の自社ブランド製品は、天然素材のなめし革を材料にして、熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品」➡︎ ④「企画・開発コンセプトは、『永く愛着を持って使えるバッグ』であり、そのため自社ブランド製品の修理も行っている。」

最大の効果 ➡︎ 与件文③「現在自社ブランド製品は25アイテム、C社売上高の20%程度ではあるが、収益に貢献している。」➡︎ ④「大都市の百貨店や商業ビルに直営店を開設して、自社ブランド製品の販売を拡大しようと検討」➡︎ ④「企画・開発コンセプトは、『永く愛着を持って使えるバッグ』であり、そのため自社ブランド製品の修理も行っている。」= 現在25アイテムで売上高は全体の2割、アイテム数より大都市の百貨店や商業ビルで販売するなら高級ブランドとして売上高を伸ばすことが最大の効果

方策 ➡︎ 与件文③「現在自社ブランド製品は25アイテム、C社売上高の20%程度ではあるが、収益に貢献している。」➡︎ ④「大都市の百貨店や商業ビルに直営店を開設して、自社ブランド製品の販売を拡大しようと検討」➡︎ ④「企画・開発コンセプトは、『永く愛着を持って使えるバッグ』であり、そのため自社ブランド製品の修理も行っている。」= 現在25アイテムで売上高は全体の2割、アイテム数より高級ブランド志向で売上高を伸ばすことが最大の効果

問4の解答下書きメモ

下書きメモ ➡︎ 自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出す直営店事業を選択する。➡︎ 「永く愛着を持って使えるバッグ」を実現するために、顧客の声や修理情報を飽きのこない永く使えるバッグ作りに活用 ➡︎ 熟練工がOJTで熟練の技を伝承するために若手を製品作りに参加させ、世代交代を円滑に進めながら売上高を伸ばす

解答例 ➡︎ 自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出す直営店事業を選択する。対応は、①顧客の声や修理情報を飽きの来ない永く使えるバッグ作りに活用して製品開発を強化し、②熟練職人がOJTで熟練の技を伝承するために若手職人を製品作りに参加させ、円滑な世代交代と増産で売上高の向上を図る。

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