中小企業診断士二次試験事例4(令和01・解答手順)

2023.09.03更新

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでD社の業種を確認 0.5分

1行目冒頭に「D 社は、1940 年代半ばに木材および建材の販売を開始し、現在は、資本金 2 億円、従業員 70 名の建材卸売業を主に営む企業である。同社は、連結子会社(D 社が 100 %出資している)を有しているため、連結財務諸表を作成している。」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入 3.5分

与件文

D 社は、1940 年代半ばに木材および建材の販売を開始し、現在は、資本金 2 億円、従業員 70 名の建材卸売業を主に営む企業である。同社は、連結子会社(D 社が 100 %出資している)を有しているため、連結財務諸表を作成している。

同社は 3 つの事業部から構成されている。建材事業部では得意先である工務店等に木材製品、合板、新建材などを販売しており、前述の連結子会社は建材事業部のための配送を専門に担当している。マーケット事業部では、自社開発の建売住宅の分譲およびリフォーム事業を行っている。そして、同社ではこれらの事業部のほかに、自社所有の不動産の賃貸を行う不動産事業部を有している。近年における各事業部の業績等の状況は以下のとおりである。

建材事業部においては、地域における住宅着工戸数が順調に推移しているため受注が増加しているSものの、一方で円安や自然災害による建材の価格高騰などによって業績は低迷Wしている。今後は着工戸数の減少が見込まれており、地域の中小工務店等ではすでに厳しい状況Tが見られている。また、建材市場においてはメーカーと顧客のダイレクトな取引(いわゆる中抜き)も増加してきており、これも将来において業績を圧迫する要因となると推測Tされる。このような状況において、同事業部では、さらなる売上の増加のために、地域の工務店等の取引先と連携を深めるとともに質の高い住宅建築の知識習得および技術の向上に努めている。Sまた、建材配送の小口化による配送コストの増大や非効率な建材調達・在庫保有が恒常的な収益性の低下を招いているWと認識している。現在、よりタイムリーな建材配送を実現するため、取引先の了解を得て、受発注のみならず在庫情報についても EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)を導入することによって情報を共有することを検討中Oである。

マーケット事業部では、本社が所在する都市の隣接地域において建売分譲住宅の企画・設計・施工・販売を主に行い、そのほかにリフォームの受注も行っている。近年、同事業部の業績は低下傾向であり、とくに、当期は一部の分譲住宅の販売が滞ったことから事業部の損益は赤字Wとなった。経営者は、この事業部について、多様な広告媒体を利用した販売促進の必要性を感じているだけでなく、新規事業開発によってテコ入れを図ることを検討中である。

不動産事業部では所有物件の賃貸を行っている。同事業部は本社所在地域においてマンション等の複数の物件を所有し賃貸しており、それによって得られる収入はかなり安定的で、全社的な利益の確保に貢献Sしている。

D 社の前期および当期の連結財務諸表は以下のとおりである。

手順2:各設問文を読んで、何を答えればいいのかを把握 ⇒1.5分

問1は定番の経営分析

問2も定番のCVP分析

問3はCFと投資

問4は子会社化の長短とEDI

手順4:各設問文を読んで、与件文の関連箇所の行番号とキーワードをわかる範囲で書き出し ⇒3分

手順5:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 0.5分

問1~3は定番なので設問順に解答

第1問(配点 25 点)


(設問 1 )
D 社の前期および当期の連結財務諸表を用いて比率分析を行い、前期と比較した場合の D 社の財務指標のうち、①悪化していると思われるものを 2 つ、②改善していると思われるものを 1 つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、当期の連結財務諸表をもとに計算した財務指標の値を⒝欄に記入せよ。なお、⒝欄の値については、小数点第 3 位を四捨五入し、カッコ内に単位を明記すること。

手順2、4の実施結果

与件文で指標の見当をつけて、指標名を書き出す。

指標の選択と値の計算

➡①の1 与件文③のW「円安や自然災害による建材の価格高騰などによって業績は低迷」と「建材配送の小口化による配送コストの増大や非効率な建材調達・在庫保有が恒常的な収益性の低下を招いている」から売上総利益に当たりをつける ➡ D社前期売上高:当期売上高=4576:4994≒1:1.09 ➡ 売上原価は1:1.12なので当期売上原価が高い ➡ 当期売上高総利益率=837÷4994×100%≒16.76%(前期は19.10%)➡ 前期より低いので課題

➡①の2 与件文④のWから「当期は一部の分譲住宅の販売が滞ったことから事業部の損益は赤字」から棚卸資産ではなく資金繰りの悪化に当たりをつける ➡ 前期短期借入金750:当期短期借入金1308=1:1.74 ➡ 当期当座比率=(524+916=1440)÷3489×100%≒41.27%(前期は19.10%)➡ 100%を大きく割り込み前期より低いので短期の安全性に課題

➡② 与件文⑤のS「得られる収入はかなり安定的で、全社的な利益の確保に貢献」から有形固定資産回転率をチェック ➡ 有形固定資産回転率4994÷3052=1.64回(前期1.49回) ➡ 全国展開が多い理由か? ➡ 効率性に優れている

解答例

➡︎ ①(a)売上高総利益率 (b)16.76%  ①(a)当座比率 (b)41.27%  ③(a)有形固定資産回転率(b)1.64回

(設問 2 )
D 社の当期の財政状態および経営成績について、前期と比較した場合の特徴を50 字以内で述べよ。

解答例

➡︎ ①原価価格の高騰や在庫滞留により収益性が、資金繰りを負債で賄い安全性が悪化し、効率的な賃貸事業で補填。(文字数:50)

第2問(配点 25 点)


D 社のセグメント情報(当期実績)は以下のとおりである。

手順2、4の実施結果

事業部単位(=セグメント)のCVP分析か?

(設問 1 )
事業部および全社(連結ベース)レベルの変動費率を計算せよ。なお、%表示で小数点第 3 位を四捨五入すること。

値の計算

➡ 特に指示がないので、変動費率を変動費÷売上高で計算する ➡ この計算方法はトラップである場合が多いので要注意

➡ 建材事業部=4303÷4514×100%≒95.33% ➡ マーケット事業部=136÷196×100%≒69.39% ➡ 不動産事業部=10÷284×100%≒3.52% ➡ 合計=4449÷4994×100%≒89.09%

解答例

➡︎ 上記参照

(設問 2 )
当期実績を前提とした全社的な損益分岐点売上高を⒜欄に計算せよ。なお、(設問1)の解答を利用して経常利益段階の損益分岐点売上高を計算し、百万円未満を四捨五入すること。また、このような損益分岐点分析の結果を利益計画の資料として使うことには、重大な問題がある。その問題について⒝欄に 30 字以内で説明せよ。

値の計算

➡ ひっかけ問題が多いので、「(設問1)の解答を利用して」に疑心暗鬼 ➡ なぜなら、公式に値を代入して求めると、損益分岐点売上高=474÷(1-4449÷4994)=474÷0.109013…≒4343.40550…≒4343だが、設問の要件に従うと474÷(1-0.8909)=474÷0.1091=4344.46379…≒4344.6379…≒4345となり、2の誤差が出る

➡ 損益構造が異なるセグメント同士を単純化した利益計画は粗い。

(設問1)の解答を利用して」に疑心暗鬼 ➡ なぜなら、公式に値を代入して求めると、損益分岐点売上高=474÷(1-4449÷4994)=474÷0.109013…≒4343.40550…≒4343だが、設問の要件に従うと474÷(1-0.8909)=474÷0.1091=4344.46379…≒4344.6379…≒4345となり、2の誤差が出る

解答例

➡︎ わからんので、より正確な4343を採用した

(設問 3 )
次期に目標としている全社的な経常利益は 250 百万円である。不動産事業部の損益は不変で、マーケット事業部の売上高が 10 %増加し、建材事業部の売上高が不変であることが見込まれている。この場合、建材事業部の変動費率が何%であれば、目標利益が達成できるか、⒜欄に答えよ。⒝欄には計算過程を示すこと。なお、(設問 1 )の解答を利用し、最終的な解答において%表示で小数点第 3 位を四捨五入すること。

値の計算

➡ 建材事業部の変動費をHとすると ➡ 合計の変動費=売上高4994+19.6(マーケット事業部の増加額196×0.1)-474-250=4289.6 ➡ H=4289.6-マーケット事業部の変動費149.6(136×215.6÷196)-10=4130 ➡ 建材事業部の変動比率=4130÷4514×100%≒91.49%

解答例

➡︎ 上記参照

第3問(配点 30 点)

D社は、マーケット事業部の損益改善に向けて、木材の質感を生かした音響関連の新製品の製造販売を計画中である。当該プロジェクトに関する資料は以下のとおりである。

<資料>
大手音響メーカーから部品供給を受け、新規機械設備を利用して加工した木材にこの部品を取り付けることによって製品を製造する。

・ 新規機械設備の取得原価は20百万円であり、定額法によって減価償却する(耐用年数5年、残存価値なし)。

・損益予測は以下のとおりである。

・ キャッシュフロー予測においては、全社的利益(課税所得)は十分にあるものとする。また、運転資本は僅少であるため無視する。なお、利益(課税所得)に対する税率は 30 % とする。

手順2、4の実施結果

CFと差額CFと投資分析か?

(設問 1 )
 各期のキャッシュフローを計算せよ。

値の計算

➡ 「全社的利益(課税所得)は十分にある」=税引前利益がマイナスでも税効果のCFを算入せよ

➡ CF=税引前利益×(1-0.3)+非現金支出(減価償却費)の式で計算 ➡ 第1期=-7×0.7+4=-0.9 ➡ 第2期=3×0.7+4=6.1 ➡ 第3期=15×0.7+4=14.5 ➡ 第4期=8×0.7+4=9.6 ➡ 第5期=9.6

解答例

➡︎ 上記参照

(設問 2 )
当該プロジェクトについて、⒜回収期間と⒝正味現在価値を計算せよ。なお、資本コストは 5 %であり、利子率 5 %のときの現価係数は以下のとおりである。解答は小数点第 3 位を四捨五入すること。

値の計算

➡ 期間回収法  ➡ 投資20≦-0.9+6.1+14.5+9.6+9.6 ➡ 4年目の9.6のとき回収できるので ➡ 3年と0.3÷9.6=3.03年……(a)

➡ CFの現在価値=第1期-0.8568(=-0.9×0.952)+第2期5.5327(=6.1×0.907) ➡ 第3期12.528(14.5×0.864) ➡ 第4期7.9008(9.6×0.823) ➡ 第5期7.5264(9.6×0.784)

➡ 正味現在価値法=第1期-0.8568+第2期5.5327+第3期12.528+第4期7.9008+第5期7.5264=32.6311 ➡ -20+32.6311=12.6311≒12.63……(b)

解答例

➡︎ 上記(a)(b)参照

(設問 3 )
<資料>記載の機械設備に替えて、高性能な機械設備の導入により原材料費および労務費が削減されることによって新製品の収益性を向上させることができる。高性能な機械設備の取得原価は 30 百万円であり、定額法によって減価償却する(耐用年数 5 年、残存価値なし)。このとき、これによって原材料費と労務費の合計が何%削減される場合に、高性能の機械設備の導入が<資料>記載の機械設備より有利になるか、⒜欄に答えよ。⒝欄には計算過程を示すこと。なお、資本コストは5 %であり、利子率 5 %のときの現価係数は(設問 2 )記載のとおりである。解答は、%表示で小数点第 3 位を四捨五入すること。

値の計算

➡ 減価償却の差額=(30-20)÷5=2 ➡ 削減率=Aとすると、第1期の差額CF={20-(8+8+6+5+2-16A)}×0.7+6と{20-(8+8+4+5+2)}×0.7+4の差額なので ➡ (16A-2)×0.7+2になる 

➡ 正味現在価値の第1期の差額CF={(16A-2)×0.7+2}×0.952 ➡ 10.6624A+0.5712 

➡ 第2期={(27A-2)0.7+2}×0.907 ➡ 17.1423A+0.5442

➡ 第3期={(32A-2)×0.7+2}×0.864 ➡ 19.3536A+0.5184 

➡ 第4期={(25A-2)×0.7+2}×0.823 ➡ 14.4025A+0.4938 

➡ 第5期={(16A-2)×0.7+2}×0.784 ➡ 8.7808A+0.4704

➡ 第1~5期の差額CFの正味現在価値>投資額の差額10(30-20)となるAは、70.3416A+2.598>10 ➡ A>0.105229…×100%>10.52% ➡ つまり、30の投資でプラスのリターンがあれば20の投資より有利、という判断?

解答例

➡︎ 上記参照

第4問(配点 20 点)

(設問 1 )
D 社は建材事業部の配送業務を分離し連結子会社としている。その⒜メリットと⒝デメリットを、それぞれ 30 字以内で説明せよ。
手順2、4の実施結果

➡ 連結子会社の(財務的な?)メリット、デメリット

(a)メリット

➡ 買収した子会社の企業価値と買収利益を明確に把握できる。(文字数:27)

(a)デメリット

➡ 子会社への管理コストと親会社独自の事務処理が発生する。(文字数:27)

解答例

➡︎ 上記参照

(設問 2 )
建材事業部では、EDI の導入を検討している。どのような財務的効果が期待できるか。60 字以内で説明せよ。

(a)メリット

➡ 与件文③の「建材配送の小口化による配送コストの増大や非効率な建材調達・在庫保有が恒常的な収益性の低下を招いている」と「よりタイムリーな建材配送を実現するため、取引先の了解を得て、受発注のみならず在庫情報についても EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)を導入することによって情報を共有することを検討中」から ➡ 調達や在庫保有管理を効率化し、迅速な配送実現に向けて在庫情報の入手活用ができれば、収益性と資本効率の改善が期待できる。(文字数:59)

解答例

➡︎ 上記参照

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