中小企業診断士二次試験事例3(平成30・解答手順)

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでC社の業種を確認 0.5分

一行目冒頭に「C 社は、1974 年の創業以来、大手電気・電子部品メーカー数社を顧客(以下「顧客企業」という)に、電気・電子部品のプラスチック射出成形加工を営む中小企業」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入 10分

手順5:与件文を読み、各設問の解答として引用する箇所に設問と同じ色のマーカーを塗る 10分

SWOT分析結果の与件文にマーカーをすると逆に判別し辛いので省略した。

与件文

【C社の概要】

    C 社は、1974 年の創業以来、大手電気・電子部品メーカー数社を顧客(以下「顧客企業」という)Sに、電気・電子部品のプラスチック射出成形加工を営む中小企業である。従業員数 60 名、年商約 9 億円、会社組織は総務部、製造部で構成されている。

    プラスチック射出成形加工(以下「成形加工」という)とは、プラスチックの材料を加熱溶融し、金型内に加圧注入して、固化させて成形を行う加工方法である。C 社では創業当初、顧客企業から金型の支給を受けて、成形加工を行っていた。

    C 社は、住工混在地域に立地していたが、1980 年、C 社同様の立地環境にあった他の中小企業とともに高度化資金を活用して工業団地に移転した。この工業団地には、現在、金属プレス加工、プラスチック加工、コネクター加工、プリント基板製作などの電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地Oしている。

    C 社のプラスチック射出成形加工製品(以下「成形加工品」という)は、顧客企業で電気・電子部品に組み立てられ、その後、家電メーカーに納品されて家電製品の一部になる。主に量産する成形加工品を受注していたが、1990 年代後半から顧客企業の生産工場の海外移転に伴い量産品の国内生産は減少し、主要顧客企業からの受注量の減少が続いた。

    こうした顧客企業の動向に対応した方策として、C 社では金型設計と金型製作部門を新設し、製品図面によって注文を受け、金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制を社内に構築Sした。また、プラスチック成形や金型製作にかかる技能士などの資格取得者を養成し、さらに OJT によってスキルアップを図るなど加工技術力の強化を推進してきた。このように金型設計・製作部門を持ち、技術力を強化したことによって、材料歩留り向上や成形速度の改善など、顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウを蓄積することができた。S

    C 社が立地する工業団地の中小企業も大手電気・電子部品メーカーを顧客としていたため、C 社同様工業団地に移転後、顧客企業の工場の海外移転に伴い経営難に遭遇した企業が多い。そこで工業団地組合が中心となり、技術交流会の定期開催、共同受注や共同開発の実施などお互いに助け合い、経営難を乗り越えてきた。C 社は、この工業団地組合活動のリーダー的存在であった。S

    近年、国内需要分の家電製品の生産が国内に戻る傾向があり、以前の国内生産品が戻りはじめた。それによって、C 社ではどうにか安定した受注量を確保できる状態になったが、顧客企業からの 1 回の発注量が以前よりも少なく、受注量全体としては以前と同じレベルまでには戻っていない。

    最近 C 社は、成形加工の際に金属部品などを組み込んでしまう成形技術(インサート成形)を習得し、古くから取引のある顧客企業の 1 社からの受注に成功している。それまで他社の金属加工品と C 社の成形加工品、そして顧客企業での両部品の組立という 3 社で分担していた工程が、C 社の高度な成形技術によって金属加工品を C社の成形加工で組み込んで納品するため、顧客企業の工程数の短縮や納期の短縮、そしてコスト削減も図られることになる。S

【生産概要】

    製造部は、生産管理課、金型製作課、成形加工課、品質管理課で構成されている。生産管理課は顧客企業との窓口になり生産計画の立案、資材購買管理、製品在庫管理を、金型製作課は金型設計・製作を、成形加工課は成形加工を、品質管理課は製品検査および品質保証をそれぞれ担当している。

    主要な顧客企業の成形加工品は、繰り返し発注され、毎日指定の数量を納品する。C 社の受注量の半数を占める顧客企業 X 社からの発注については、毎週末の金曜日に翌週の月曜日から金曜日の確定納品計画が指示される。C 社の生産管理課では X社の確定納品計画に基づき、それにその他の顧客企業の受注分を加え、毎週金曜日に翌週の生産計画を確定する。日々の各製品の成形加工は、各設備の能力、稼働状況を考慮して原則週 1 回計画される。また、生産ロットサイズは長時間を要するプラスチック射出成形機(以下「成形機」という)の段取り時間を考慮して決定される。生産効率を上げるために生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、製品在庫が過大Wである。C 社の主要製品で、最も生産数量が多い X 社製品 A の今年 7 月 2 日(月)から 7 月 31 日(火)までの在庫数量推移を図 1 に示す。製品 A は、毎日 600 個前後の納品指定数であり、C 社の生産ロットサイズは約 3,000 個で週 1 回の生産を行っている。他の製品は、毎日の指定納品数量が少なく、変動することもあるため、製品 A以上に在庫管理に苦慮している。W

    成形加工課の作業は、作業者 1 人が 2 台の成形機を担当し、段取り作業、成形機のメンテナンスなどを担当している。また全ての成形機は、作業者が金型をセットし材料供給してスタートを指示すれば、製品の取り出しも含め自動運転し、指示した成形加工を終了すると自動停止状態となる。

    図 2 で示す「成形機 2 台持ちのマン・マシン・チャート(現状)」は、製品 A の成形加工を担当している 1 人の作業者の作業内容である。

    成形機の段取り時間が長時間となっている主な原因は、金型、使用材料などを各置き場で探し、移動し、準備する作業に長時間要しているWことにある。図 2 で示す「成形機 1 の段取り作業内容の詳細」は、製品 A の成形加工作業者が、昼休み直後に行った製品 B のための段取り作業の内容である。金型は顧客からの支給品もまだあり、C社内で統一した識別コードがなく、また置き場も混乱していることから、成形加工課の中でもベテラン作業者しか探すことができない金型まである。また使用材料は、仕入先から材料倉庫に納品されるが、その都度納品位置が変わり探すことになる。W

  顧客企業からは、短納期化、小ロット化、多品種少量化がますます要望される状況Wにあり、ジャストインタイムな生産に移行するため、C 社では段取り作業時間の短縮などの改善によってそれに対応することを会社方針としている。

    その対策の一つとして、現在、生産管理のコンピュータ化を進めようとしているが、生産現場で効率的に運用するためには、成形加工課の作業者が効率よく金型、材料などを使用できるようにする必要があり、そのためにデータベース化などの社内準備を検討中である。

手順2:各設問文を読んで解答に必要な5W2Hを確認しアンダーライン 4.5分

手順4:各設問文を読んで、与件文から解答を探さなければいけない文言箇所にマーカーで色塗り(設問別に色分け) 5分

手順6:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 5分

前問の解答を利用する構成のため、問1から順序よく解答する。

第1問(配点 20 点)

解答例はこちら

顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C 社の業績は維持されてきた。その理由を 80 字以内で述べよ。

第2問(配点 20 点)

解答例はこちら

C 社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図 2 )を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

第3問(配点 20 点)

解答例はこちら

C 社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図 1 )を分析して、C 社の生産計画上の問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

第4問(配点 20 点)

解答例はこちら

C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を 120 字以内で述べよ。

第5問(配点 20 点)

解答例はこちら

わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C 社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

手順7:解答の作成 45分

問1の解答に盛り込む事項

顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C 社の業績は維持されてきた。その理由を 80 字以内で述べよ。

C 社の業績は維持されてきた。その理由 ➡︎ 与件文⑤「C 社では金型設計と金型製作部門を新設し、製品図面によって注文を受け、金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制を社内に構築」 ➡︎ ⑥「工業団地組合が中心となり、技術交流会の定期開催、共同受注や共同開発の実施などお互いに助け合い、経営難を乗り越えてきた。C 社は、この工業団地組合活動のリーダー的存在であった。」➡︎ 金型の設計・製作から成形加工までの一貫生産体制の確立、工業団地組合で共同受注や共同開発を実施し経営難を乗り越えた

問1の解答の下書きメモ

解答例 ➡︎ ①金型の設計・製作から成形加工までの一貫受注生産体制の確立で差別化を図り、②工業団地組合が中心となって共同受注や共同開発の実施などで互いに助け合ったからである。

※※※※※※※

問2の解答に盛り込む事項

C 社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図 2 )を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

成形加工の作業方法に関する問題点 ➡︎ 与件文⑬「成形機の段取り時間が長時間となっている主な原因は、金型、使用材料などを各置き場で探し、移動し、準備する作業に長時間要していることにある。図 2 で示す「成形機 1 の段取り作業内容の詳細」は、製品 A の成形加工作業者が、昼休み直後に行った製品 B のための段取り作業の内容である。金型は顧客からの支給品もまだあり、C社内で統一した識別コードがなく、また置き場も混乱していることから、成形加工課の中でもベテラン作業者しか探すことができない金型まである。また使用材料は、仕入先から材料倉庫に納品されるが、その都度納品位置が変わり探すことになる。」➡︎ 置き場での探し、移動、準備作業に長時間要す ➡︎ 顧客からの支給品あり ➡︎ 統一した識別コード無し ➡︎ 探せない金型 ➡︎ 材料倉庫の納品位置流動的

成形加工の作業方法に関する改善策 ➡︎ 金型に統一コードを付けて定位置に置き探しやすくする ➡︎ 使用材料は種類別に定位置に保管 ➡︎ 同じ製品の金型と材料は同時に移動 ➡︎ 成形機1と2の順序を入れ替えると成形機の作業終了が30分早まる

問2の解答の下書きメモ

解答例 ➡︎ 問題は、材料は保管場所が不特定で金型は統一した識別コードもないので探しに時間を要し、成形機の待ち時間が多い点である。改善策は、識別コードと保管場所の特定で時間を短縮し、同じ製品の金型と材料は同時に移動し、成形機の作業順序を変えることである。

※※※※※※※

問3の解答に盛り込む事項

C 社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図 1 )を分析して、C 社の生産計画上の問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

生産計画上の問題点 ➡︎ 与件文⑩「主要な顧客企業の成形加工品は、繰り返し発注され、毎日指定の数量を納品する。C 社の受注量の半数を占める顧客企業 X 社からの発注については、毎週末の金曜日に翌週の月曜日から金曜日の確定納品計画が指示される。C 社の生産管理課では X社の確定納品計画に基づき、それにその他の顧客企業の受注分を加え、毎週金曜日に翌週の生産計画を確定する。日々の各製品の成形加工は、各設備の能力、稼働状況を考慮して原則週 1 回計画される。また、生産ロットサイズは長時間を要するプラスチック射出成形機(以下「成形機」という)の段取り時間を考慮して決定される。生産効率を上げるために生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、製品在庫が過大である。C 社の主要製品で、最も生産数量が多い X 社製品 A の今年 7 月 2 日(月)から 7 月 31 日(火)までの在庫数量推移を図 1 に示す。製品 A は、毎日 600 個前後の納品指定数であり、C 社の生産ロットサイズは約 3,000 個で週 1 回の生産を行っている。他の製品は、毎日の指定納品数量が少なく、変動することもあるため、製品 A以上に在庫管理に苦慮している。」

生産計画上の問題点 ➡︎ 与件文⑩「生産効率を上げるために生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、製品在庫が過大である。C 社の主要製品で、最も生産数量が多い X 社製品 A の今年 7 月 2 日(月)から 7 月 31 日(火)まけでの在庫数量推移を図 1 に示す。製品 A は、毎日 600 個前後の納品指定数であり、C 社の生産ロットサイズは約 3,000 個で週 1 回の生産を行っている。他の製品は、毎日の指定納品数量が少なく、変動することもあるため、製品 A以上に在庫管理に苦慮している。」➡︎製品A1000〜2000の在庫過多、X社以外は確定納品計画がない、ロットサイズで週一生産だが4日に1度の生産が多い

生産計画上の改善策 ➡︎ 生産効率を上げるため生産ロットサイズを3000で固定するなら、確定した納品計画に基づいて週の生産回数と曜日を決める。欠品リスクを解消するために安全在庫を設定し、それを下回ったら4日間隔で生産する。

問3の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ X社以外は確定納品計画がないため、C社の生産計画が狂い、在庫過多や欠品リスクの問題が生じている。改善策は、X社以外からの受注も確定納品計画に基づいた生産とすることで、在庫過多や欠品リスクを防止する。

※※※※※※※

問4の解答に盛り込む事項

C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を 120 字以内で述べよ。

C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容 ➡︎ 与件文⑮「生産現場で効率的に運用するためには、成形加工課の作業者が効率よく金型、材料などを使用できるようにする必要があり、そのためにデータベース化などの社内準備を検討中」 ➡︎ ⑭「顧客企業からは、短納期化、小ロット化、多品種少量化がますます要望される状況にあり、ジャストインタイムな生産に移行するため、C 社では段取り作業時間の短縮などの改善によってそれに対応することを会社方針としている。」

成形加工課の作業者が効率よく金型、材料などを使用できるようにする必要 ➡︎ 与件文⑨「生産管理課は顧客企業との窓口になり生産計画の立案、資材購買管理、製品在庫管理」を担当 ➡︎ 金型と材料をデータベース化し、生産する製品を特定すれば、どこにどれだけ保管されているかや一度に移動できるものの一覧を可視化する。また、成形機1、2に振り分ける製品の組み合わせや、毎日の出荷に応じて生産計画の作成を最適化し整備しておく。

問4の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ 金型と材料をデータベース化し、生産する製品に必要な物の保管場所と同時に移動できる物を特定できることで作業時間を短縮する。また、成形機1、2に振り分ける製品の組み合わせを最適化することで、待ち時間と全体の作業時間を短縮し作業の効率化を図る。

※※※※※※※

問5の解答に盛り込む事項

わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C 社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について助言 ➡︎ 与件文③「工業団地には、現在、金属プレス加工、プラスチック加工、コネクター加工、プリント基板製作などの電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地」 ➡︎ ⑤「プラスチック成形や金型製作にかかる技能士などの資格取得者を養成し、さらに OJT によってスキルアップを図るなど加工技術力の強化を推進してきた。このように金型設計・製作部門を持ち、技術力を強化したことによって、材料歩留り向上や成形速度の改善など、顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウを蓄積することができた。」➡︎ ⑧「C 社の高度な成形技術によって金属加工品を C社の成形加工で組み込んで納品するため、顧客企業の工程数の短縮や納期の短縮、そしてコスト削減も図られることになる。」

立地環境や経営資源を生かす ➡︎ 工業団地には電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地 ➡︎ 技能士などの資格取得者を養成し、さらに OJT によってスキルアップを図るなど加工技術力の強化を推進。金型設計・製作部門を持ち、技術力を強化したことによって、材料歩留り向上や成形速度の改善など、顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウを蓄積。インサート成形技術によって金属加工品を C社の成形加工で組み込んで納品するため、顧客企業の工程数の短縮や納期の短縮、そしてコスト削減も図られる。

問5の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ 資格取得やOJTの推進により強化した加工技術でインサート成形の受注増を目指し、協業できる企業が多く立地している工業団地組合内での共同受注や共同開発を促進することで、発注元が得られる工程数、納期の短縮とコスト削減効果の大きさを訴求する。

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