中小企業診断士二次試験事例3(平成29・解答手順)

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでC社の業種を確認 0.5分

一行目冒頭に「C 社は、1947年の創業で、産業機械やプラント機器のメーカーを顧客とし、金属部品の加工を行ってきた社長以下24 名の中小企業」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入 10分

手順5:与件文を読み、各設問の解答として引用する箇所に設問と同じ色のマーカーを塗る 10分

SWOT分析結果の与件文にマーカーをすると逆に判別し辛いので省略した。

与件文

    C 社は、1947年の創業で、産業機械やプラント機器のメーカーを顧客とし、金属部品の加工を行ってきた社長以下24 名の中小企業である。受注のほとんどが顧客企業から材料や部品の支給を受けて加工を担う賃加工型の下請製造業で、年間売上高は約2億円である。

    現在の社長は、創業者である先代社長から経営を引き継いだ。10 年前、CAD 等のIT の技能を備えた社長の長男(現在常務)が入社し、設計のCAD 化や老朽化した設備の更新など、生産性向上に向けた活動を推進Sしてきた。この常務は、高齢の現社長の後継者として社内で期待されている。

    C 社の組織は、社長、常務の他、経理担当1名、設計担当1名、製造部20 名で構成されている。顧客への営業は社長と常務が担当している。

    近年、売り上げの中心となっている産業機械・プラント機器の部品加工では、受注量が減少し、加えて受注単価の値引き要請も厳しい状況が続いている。Wその対応として、現在C 社では新規製品の事業化を進めている。

【生産概要】

    製造部は機械加工班と製缶板金班で構成され、それぞれ10 名の作業者が加工に従事している。機械加工班はNC 旋盤、汎用旋盤、フライス盤などの加工機械を保有し、製缶板金班はレーザー加工機、シャーリング機、プレス機、ベンダー機、溶接機などの鋼板加工機械を保有している。

    C 社では創業以来、顧客の要求する加工精度を保つため機械の専任担当制をとっており、そのため担当している機械の他は操作ができない作業者が多い。また、各機械の操作方法や加工方法に関する技術情報は各専任作業者それぞれが保有し、標準化やマニュアル化は進められていない。W

    加工内容については、機械加工班はコンベアなどの搬送設備、食品加工機械、農業機械などに組み込まれる部品加工、鋳物部品の仕上げ加工など比較的小物でロットサイズが大きい機械加工であり、製缶板金班は農業機械のフレーム、建設用機械のバケット、各種産業機械の本体カバーなど大型で多品種少量の鋼材や鋼板の加工が中心である。

    顧客から注文が入ると、受注窓口である社長と常務から、担当する製造部の作業者に直接生産指示が行われる。顧客は古くから取引関係がある企業が多く、受注品の多くは各顧客から繰り返し発注される部品である。そのため受注後の加工内容などの具体的な打ち合わせは、各機械を担当する作業者が顧客と直接行っている。

【新規事業の概要】

    新規事業は、3次元CAD で作成した3次元データを用いて、3次元形状の加工ができる小型・精密木工加工機「CNC 木工加工機」の事業化である。この新規事業は、異業種交流の場で常務が耳にした木材加工企業の話がヒントになり進められた。「木工加工機は大型化、NC 化が進み、加工機導入の際には多額の投資を必要とするようになった。以前使っていたならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲しいが、見つからない」との情報であった。ならい旋盤とは、模型をなぞって刃物が移動し、模型と同じ形状の加工品を容易に再現できる旋盤である。

    常務と設計担当者が中心となり加工機の設計、開発を進め、外部のCNC 制御装置製作企業も加えて、試作機そして1号機の実現にこぎつけた。

    しかし、それまで木工加工関連企業とのつながりも情報もないC 社にとって、この新規事業の販路開拓をどのように進めるのか、製品開発当初から社内で大きな問題となっている。C 社は、特に新規顧客獲得のための営業活動を積極的に行った経験がない。また、販売やマーケティングに関するノウハウもなく、機械商社などの販売チャネルもない。W

    そこで常務が中心となって、木工機械の展示会に出展することから始めた。展示会では、特徴である精密加工の内容を来展者に理解してもらうため、複雑な形状の加工を容易に行うCNC 木工加工機の実演を行ったが、それによって多くの来展者の注目を集めることができた。特に、NC 機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木工加工関係者から、プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、CNC木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から評価され、C 社内では大きな手応えを感じた。そして展示会後、来展者2社から注文が入り、本格的に生産がスタートしている。このCNC木工加工機については、各方面から注目されており、今後改良や新機種の開発を進めていく予定Sである。

    この展示会での成功を参考に、現在は会社案内程度の掲載内容となっているホームページを活用して、インターネットで広くPR することを検討している。

    CNC 木工加工機の生産は、内部部品加工を機械加工班で、制御装置収納ケースなどの鋼板加工と本体塗装を製缶板金班でそれぞれ行い、それに外部調達したCNC 制御装置を含めて組み立てる。これまで製造部では専任担当制で作業者間の連携が少なかったが、この新規事業では、機械加工班と製缶板金班が同じCNC 木工加工機の部品加工、組み立てに関わることとなる。なお、最終検査は設計担当者が行う。

    これまで加工賃収入が中心であったC社にとって、付加価値の高い最終製品に育つものとしてCNC 木工加工機は今後が期待されている。

手順2:各設問文を読んで解答に必要な5W2Hを確認しアンダーライン 4.5分

手順4:各設問文を読んで、与件文から解答を探さなければいけない文言箇所にマーカーで色塗り(設問別に色分け) 5分

手順6:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 5分

問1〜問4まで木工加工機の生産管理、生産余力、HPを活用した受注方策、現有内部資源での事業展開を実現する製品サービスの方策が問われているので、順序よく解答する。

第1問(配点 30 点)

解答例はこちら

   木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対応策を140 字以内で述べよ。

第2問(配点 20 点)

解答例はこちら

    C 社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる余力をCNC 木工加工機の生産に充てたいと考えている。それを実現するための課題とその対応策について120 字以内で述べよ。

第3問(配点 20 点)

解答例はこちら

    C 社では、ホームページを活用したCNC 木工加工機の受注拡大を考えている。展示会での成功を参考に、潜在顧客を獲得するためのホームページの活用方法、潜在顧客を受注に結び付けるための社内対応策を160 字以内で述べよ。

第4問(配点 30 点)

解答例はこちら

    C 社社長は、今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値なCNC 木工加工機事業を進めたいと思っている。これを実現するためには、製品やサービスについてどのような方策が考えられるか、140 字以内で述べよ。

手順7:解答の作成 45分

問1の解答に盛り込む事項

木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対応策 ➡︎ 与件文⑥「顧客の要求する加工精度を保つため機械の専任担当制をとっており」 ➡︎ ⑧「顧客から注文が入ると、受注窓口である社長と常務から、担当する製造部の作業者に直接生産指示が行われる。顧客は古くから取引関係がある企業が多く、受注品の多くは各顧客から繰り返し発注される部品である。そのため受注後の加工内容などの具体的な打ち合わせは、各機械を担当する作業者が顧客と直接行っている。」 ➡︎ ⑭「これまで製造部では専任担当制で作業者間の連携が少なかったが、この新規事業では、機械加工班と製缶板金班が同じCNC 木工加工機の部品加工、組み立てに関わることとなる。」

問1の解答の下書きメモ

解答例 ➡︎ C社は機械の専任担当制を取っており、生産管理も事実上担当作業者任せになっているため、複数の作業者で生産する木工加工機の納期遅延や手待ちの発生防止が課題となる。対応策は、全社の生産管理を一元的に行う組織を設け、全作業者の負荷を平準化し、作業者間の連携強化で生産管理を効率化する。

※※※※※※※

問2の解答に盛り込む事項

C 社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる余力をCNC 木工加工機の生産に充てるための課題とその対応策 ➡︎ 与件文⑥「顧客の要求する加工精度を保つため機械の専任担当制をとっており」 ➡︎ ⑧「顧客から注文が入ると、受注窓口である社長と常務から、担当する製造部の作業者に直接生産指示が行われる。顧客は古くから取引関係がある企業が多く、受注品の多くは各顧客から繰り返し発注される部品である。そのため受注後の加工内容などの具体的な打ち合わせは、各機械を担当する作業者が顧客と直接行っている。」➡︎

問2の解答の下書きメモ

解答例 ➡︎ 課題は、機械の専任担当制を廃止し、多能工化を図ることで、作業者ごとの負荷を平準化して生産能力を上げることである。対応策は、OJTや社内研修や班の内外で人事交流を行うことで操作できる機械の種類を増やし、生産能力の余力を得ることである。

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問3の解答に盛り込む事項

展示会での成功を参考に、潜在顧客を獲得するためのホームページの活用方法、潜在顧客を受注に結び付けるための社内対応策 ➡︎ 与件文⑪「それまで木工加工関連企業とのつながりも情報もないC 社にとって、この新規事業の販路開拓をどのように進めるのか、製品開発当初から社内で大きな問題となっている。C 社は、特に新規顧客獲得のための営業活動を積極的に行った経験がない。また、販売やマーケティングに関するノウハウもなく、機械商社などの販売チャネルもない。」 ➡︎ ⑫「展示会では、特徴である精密加工の内容を来展者に理解してもらうため、複雑な形状の加工を容易に行うCNC 木工加工機の実演を行ったが、それによって多くの来展者の注目を集めることができた。特に、NC 機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木工加工関係者から、プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、CNC木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から評価」

問3の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ CNC木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性を理解させるために実演動画を作成し、展示会で得られたよくある質問の回答と一緒にてホームページで公開して、潜在顧客に訴求する。ホームページで製品パンプレットを提供し、送付先潜在顧客からの実演依頼を募集し、出張実演を行うことで顧客開拓を行い、製造部門と一緒に受注活動につなげる営業体制を整える。

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問4の解答に盛り込む事項

今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値なCNC 木工加工機事業を進めたい。実現するためには、製品やサービスについてどのような方策が考えられるか ➡︎ 与件文⑨「木工加工機は大型化、NC 化が進み、加工機導入の際には多額の投資を必要とするようになった。以前使っていたならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲しいが、見つからない」 ➡︎ ⑫「プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、CNC木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から評価」➡︎ 方策は、①木工加工機を小型化していくことで操作性を向上させ、②駆動部や刃物を何種類も使えるようにすることで加工可能な材質を増やし、③プログラムの作成支援や作成業務を受託することで顧客の加工範囲を広げ、④有料のメンテナンスやアフターサービスを行うことで顧客の負担軽減を図ることである。

問4の解答下書きメモ

解答例 ➡︎ 方策は、①木工加工機を小型化していくことで操作性を向上させ、②駆動部や刃物を何種類も使えるようにすることで加工可能な材質を増やし、③プログラムの作成支援や作成業務を受託することで顧客の加工範囲を広げ、④有料のメンテナンスやアフターサービスを行うことで顧客の負担軽減を図ることである。

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