中小企業診断士二次試験事例4(平成29・解答手順)

2023.09.01更新

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでD社の業種を確認 ⇒0.5分

1行目冒頭に「D社は、所在地域における10社の染色業者の合併によって70年前に設立され、それ以来、染色関連事業を主力事業としている。現在、同社は、80%の株式を保有する子会社であるD-a社とともに、同事業を展開している。D社の資本金は2億円で、従業員はD社単体親会社が150名、子会社であるD-a社が30名である。」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入。解答に影響の与えそうな箇所には青のアンダーラインを引く ⇒3.5分

与件文

D社は、所在地域における10社の染色業者の合併によって70年前に設立され、それ以来、染色関連事業を主力事業としている。現在、同社は、80%の株式を保有する子会社であるD-a社とともに、同事業を展開している。D社の資本金は2億円で、従業員はD社単体親会社が150名、子会社であるD-a社が30名である。

親会社であるD社は織物の染色加工を主たる業務とし、子会社であるD-a社がその仕立て、包装荷造業務、保管業務を行っている。先端技術を有するD社の主力工場においてはポリエステル複合織物を中心に加工作業を行っているが、他方で、人工皮革分野やマイクロファイバーにおいても国内のみならず海外でも一定の評価を得ている。またコーティング加工、起毛加工などの多様な染色加工に対応した仕上げ、後処理技術を保有し、高品質の製品を提供している。S

現状におけるD社の課題をあげると、営業面において、得意先、素材の変化に対応した製品のタイムリーな開発と提案を行い、量・質・効率を加味した安定受注を確保すること、得意先との交渉による適正料金の設定によって採算を改善すること、生産面においては、生産プロセスの見直し、省エネルギー診断にもとづく設備更新、原材料のVAおよび物流の合理化による加工コスト削減があげられている。W

D社は新規事業として発電事業に着手している。D社の所在地域は森林が多く、間伐等で伐採されながら利用されずに森林内に放置されてきた小径木や根元材などの未利用木材が存在しており、D社はこれを燃料にして発電を行う木質バイオマス発電事業を来年度より開始する予定である。同社所在の地方自治体は国の基金を活用するなどして木質バイオマス発電プラントの整備等を支援しており、同社もこれを利用することにしている(会計上、補助金はプラントを対象に直接減額方式の圧縮記帳を行う予定である)。この事業については、来年度にD社の関連会社としてD-b社を設立し、D社からの出資2千万円および他主体からの出資4千万円、銀行からの融資12億円を事業資金として、木質バイオマス燃料の製造とこれを利用した発電事業、さらに電力販売業務を行う。なお、来年度上半期にはプラント建設、試運転が終了し、下半期において商業運転を開始する予定である。

以下は、当年度のD社と同業他社の実績財務諸表である。D社は連結財務諸表である一方、同業他社は子会社を有していないため個別財務諸表であるが、同社の事業内容はD社と類似している。

手順2:各設問文を読んで、何を答えればいいのかを把握 ⇒1.5分

手順4:各設問文を読んで、与件文の関連箇所の行番号とキーワードをわかる範囲で書き出し ⇒3分

手順5:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 0.5分

問1は定番の経営分析

問2も頻出の損益予測

問3も頻出の投資評価

問4は連結財務諸表で?問題

第1問(配点 25 点)


(設問 1 )
D社と同業他社のそれぞれの当年度の財務諸表を用いて経営分析を行い比較した場合、D社の課題を示すと考えられる財務指標を2つ、D社が優れていると思われる財務指標を1つ取り上げ、それぞれについて、名称をa欄に、財務指標の値をb欄に記入せよ。なお、解答にあたっては、①、②の欄にD社の課題を示す指標を記入し、③の欄にD社が優れていると思われる指標を記入すること。また、b 欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、カッコ内に単位を明記すること。

手順2、4の実施結果

与件文で指標の見当をつけて、指標名を書き出す。

指標の選択と値の計算

➡ 与件文③のWから ➡「加工コスト削減」➡ 売上高の比がD社:同業他社=1:0.7 ➡ 売上原価は1:0.64なので同業他社より売上原価が高い ➡ D社の売上高総利益率=484÷3810×100%≒12.70%(同業他社は20.22%)➡ 利益率が同業他社より低いので課題

➡ 与件文③のWから ➡「得意先との交渉による適正料金の設定によって採算を改善すること」➡ 利益剰余金が低いが流動性は短期の安全性を害する程度ではない。が、設備投資等に内部留保資金を充分に回せないので長期借入が大きい ➡ 負債比率=2443÷(606-180)×100%≒573.47%(同業他社92.17%)➡ 負債が同業他社かなり多いので課題

➡ 損益計算書の注「特別損失は…工場閉鎖関連損失」から ➡ 有形固定資産の合理化を図ったと考えた ➡ D社の有形固定資産回転率=3210÷1969≒1.93回(同業他社は1.82回)➡ 回転率が同業他社より多いので優秀

解答例➡︎ ①(a)売上高総利益率 (b)12.70%  ②(a)負債比率 (b)573.47%  ③(a)有形固定資産回転率(b)1.93回


(設問 2 )
D社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴を40字以内で述べよ。

手順2、4の実施結果

与件文で見当をつけておく。

与件文を一般論化(=キーワード化)し文字数と闘う

➡ 適正料金を設定できず収益性や資本構造の安全性に課題。施設の合理化で効率性は優秀。(文字数:40)

解答例

➡︎ 上記参照

第2問(配点 18 点)

(設問 1 )
以下の来年度の予測資料にもとづいて、染色関連事業の予測損益計算書を完成させよ。なお、端数が生じる場合には、最終的な解答の単位未満を四捨五入すること。

<予測資料>
当年度の損益計算書における売上原価のうち1,650百万円、販売費及び一般管理費のうち120百万円が固定費である。当年度に一部の工場を閉鎖したため、来期には売上原価に含まれる固定費が100百万円削減されると予測される。また、当年度の売上高の60%を占める大口取引先との取引については、交渉によって納入価格が3%引き上げられること、さらに、材料価格の高騰によって変動製造費用が5%上昇することが見込まれる。なお、その他の事項に関しては、当年度と同様であるとする。

手順2、4の実施結果

解いてみて時間がかかりそうならパス。

値の計算

➡ 売上高3810の予測 ➡ 3810×0.6×0.03=68.58増 ➡ 3810+68.58=3878.58≒3879

➡ 売上原価3326の予測 ➡ 固定費1650-100=1550 ➡ 変動費3326-1650=1676 ➡ 1676×0.05=83.8追加 ➡ 固定費1550+変動費1676+83.8=3309.8

➡ 販管費270の予測 ➡ 固定費120 ➡ 変動費270-120=150 ➡ 変化なし 

解答例

➡︎ 売上高3879 売上原価3310 売上総利益569 販管費270 営業利益299 

(設問 2 )
発電事業における来年度の損益は以下のように予測される。発電事業における予想営業利益(損失の場合には△を付すこと)を計算せよ。

<来年度の発電事業に関する予測資料>

試運転から商業運転に切り替えた後の売電単価は1kWhあたり33円、売電量は12 百万kWhである。試運転および商業運転に関する費用は以下のとおりである。

手順2、4の実施結果

解いてみて時間がかかりそうならパス。

値の計算

➡ 予想営業利益=売上高396(=33×12)-変動費(60+210)-370=△244百万円

解答例

➡︎ 上記参照 

(設問 3 )
再来年度以降、発電事業の年間売電量が40百万kWhであった場合の発電事業における年間予想営業利益を計算せよ。また、売電単価が1kWhあたり何円を下回ると損失に陥るか。設問2の予測資料にもとづいて計算せよ。なお、売電単価は1円単位で設定されるものとする。

手順2、4の実施結果

解いてみて時間がかかりそうならパス。

値の計算

➡ 予想営業利益=売上高1320(=33×40)-変動費(210×40÷12)-370=1320-700-370=250百万円

➡ 最低売電単価P ➡ 売上高40P=変動費(210×40÷12)+370=700+370 ➡ P=1070÷40≒27円/kw

解答例

➡︎ 上記参照 

第3問(配点 29 点)

(設問 1 )
染色関連事業の収益性を改善するために、設備更新案を検討中である。以下に示す設備更新案にもとづいて、第X1年度末の差額キャッシュフロー(キャッシュフローの改善額)を解答欄に従って計算したうえで、各年度の差額キャッシュフローを示せ。なお、利益に対する税率は30%、更新設備の利用期間においては十分な利益が得られるものとする。また、マイナスの場合にはを付し、最終的な解答において百万円未満を四捨五入すること。

<設備更新案>
第X1年度初めに旧機械設備に代えて汎用機械設備を導入する。これによって、従来の染色加工を高速に行えることに加えて、余裕時間を利用して新技術による染色加工を行うことができる。

旧機械設備を新機械設備(初期投資額200百万円、耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)に取り換える場合、旧機械設備(帳簿価額50百万円、残存耐用年数5年、定額法償却、残存価額0円)の処分のために10百万円の支出が必要となる(初期投資と処分のための支出は第X1年度初めに、旧機械設備の除却損の税金への影響は第X1年度末に生じるものとする)。設備の更新による現金収支を伴う、年間の収益と費用の変化は以下のように予想されている(現金収支は各年度末に生じるものとする)。

なお、耐用年数経過後(5年後)の設備処分支出は、旧機械設備と新機械設備ともに5百万円であり、この支出および税金への影響は第X5年度末に生じるものとする。

手順2、4の実施結果

「差額」キャッシュフロー? ➡ 解いてみて時間がかかりそうならパス。

値の計算

➡ 「差額」は設備更新をしない場合とした場合それぞれで得られるCFの差額と判断

値は差額で表示1期首1期末2期末3期末4期末5期末
表内の収益-費用7070707070
-減価償却費(40-10)3030303030
-減損・除却10605-5=0
小計-20①40404040
-税(30%)(②は節税効果分)-6②12121212
税後小計-14③28282828
+非現金支出戻し(減価償却費等)30+60④30303030
投資・残存価値-200
差額FCF-210⑥76⑤58⑦58⑧58⑨58⑩

➡ 設問1の「更新設備の利用期間においては十分な利益が得られるものとする」から表内②の計算が必要と判断

解答例

➡︎ 税引前利益の差額=① 税金支出の差額=② 税引後利益の差額=③ 非現金支出の差額=④ 第×1年度末の差額キャッシュフロー=⑤ 第×1年度初め=⑥ 第×1年度末=⑤ 第×2年度末=⑦ 第×3年度末=⑧ 第×4年度末=⑨ 第×5年度末=⑩ 

(設問 2 )
この案の採否を検討する際に考慮するべき代表的な指標を安全性と収益性の観点から1つずつ計算し、収益性の観点から採否を決せよ。資本コストは7%である。なお、解答にあたっては、以下の複利現価係数を利用し、最終的な解答の単位における小数点第3位を四捨五入すること。

手順2、4の実施結果

➡ 安全性?収益性? ➡ 設問1解答後に考えることにした

指標の選択と値の計算

➡ 安全性=早期に資本を回収することと判断し回収期間法?期間回収法?を選択 ➡ 210≦76+58+58+58+58のうち210=になるのは76+58+58+18/58なので、3年と18÷58=0.31034…≒3.31年

➡ 収益性=最大利益の獲得と判断し正味現在価値法を選択 ➡ -210+76×0.9346+58×(0.8734+0.8163+0.7629+0.7130)=-210+254.6344=44.6344≒44.63百万円

解答例

➡︎ 安全性:回収期間法=3.31年  収益性:正味現在価値法=44.63百万円 

第4問(配点 28 点)

(設問 1 )
親会社D社単体の事業活動における当年度の損益状況を、30字以内で説明せよ。なお、子会社からの配当は考慮しないこと。

手順2、4の実施結果

➡ 親会社単体の損益状況?どこにあるの?

値の計算

➡ 損益計算書からわかるのは、子会社単体の当期純利益(税引後?)=被支配株主損益=16÷20%=80(与件文から「80%の株式を保有する子会社」)➡ D社の当期純利益が27なので、子会社の純利益を引くと赤字(27-80=-53)

解答例

➡︎ 子会社分の当期純利益を除外すると単体では赤字になる。(文字数:26) 

(設問2 )
再来年度に関連会社D-b社を子会社化するか否かを検討している。D-b社を子会社にすることによる、連結財務諸表の財務指標に対する主要な影響を30字以内で説明せよ。

手順2、4の実施結果

➡ D-b社単体の損益状況?どこにあるの?

値の計算

➡ 与件文④中の「来年度にD社の関連会社としてD-b社を設立し、D社からの出資2千万円および他主体からの出資4千万円、銀行からの融資12億円を事業資金として、木質バイオマス燃料の製造とこれを利用した発電事業、さらに電力販売業務を行う。なお、来年度上半期にはプラント建設、試運転が終了し、下半期において商業運転を開始する予定」から大きな影響がでそうなのが、12億円の長期借入金 ➡ 負債比率がさらに悪化する

解答例

➡︎ 長期借入金の増加で負債過多が進み、負債比率がさらに悪化する。(文字数:30) 

(設問3 )
関連会社を子会社化することによって、経営上、どのような影響があるか。財務指標への影響以外で、あなたが重要であると考えることについて、60字以内で説明せよ。

手順2、4の実施結果

➡ 財務諸表を除く経営への影響?

経営上の影響(除く財務指標)

➡ 何のための子会社化? ➡ 一体化?ではなく、支配して増益体制や機能の獲得 ➡ 支配には決定意思の迅速な実行とそれを可能にする一体的に行動できる確立した内部統制

解答例

➡︎ 支配により増益の体制や機能を獲得する必要があるため、意思決定の迅速な伝達と一体的に行動できる内部統制の獲得が重要である。(文字数:60) 

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