中小企業診断士二次試験事例4(令和04・解答手順)

2023.09.07更新

手順1:行番号を記入し、与件文の冒頭を読んでD社の業種を確認 0.5分

1行目冒頭に「D 社は、1990 年代半ばに中古タイヤ・アルミホイールの販売によって創業した会社であり、現在は廃車・事故車の引取り・買取りのほか中古自動車パーツの販売や再生資源の回収など総合自動車リサイクル業者として幅広く事業活動を行っている。D 社の資本金は 1,500 万円で直近の売上高は約 10 億 3,000 万円」とある。

手順3:与件文を読んで、段落単位でSWOT分析をして「S」「W」「O」「T」を該当箇所にアンダーラインをしながら記入 3.5分

与件文

D 社は、1990 年代半ばに中古タイヤ・アルミホイールの販売によって創業した会社であり、現在は廃車・事故車の引取り・買取りのほか中古自動車パーツの販売や再生資源の回収など総合自動車リサイクル業者として幅広く事業活動を行っている。D 社の資本金は 1,500 万円で直近の売上高は約 10 億 3,000 万円である。

創業当初 D 社は本社を置く地方都市を中心に事業を行っていたが、近年の環境問題や循環型社会に対する関心の高まりに伴って順調にビジネスを拡大し、今では海外販売網の展開やさらなる事業多角化を目指しているS。 

D 社の事業はこれまで廃車・事故車から回収される中古パーツのリユース・リサイクルによる販売が中心であった。しかし、ここ数年海外における日本車の中古車市場拡大し、それらに対する中古パーツの需要も急増していることから、現在 D 社では積層造形 3D プリンターを使用した自動車パーツの製造・販売に着手しようとしている。また上記事業と並行して D 社は、これまで行ってきた廃車・事故車からのパーツ回収のほかに、より良質な中古車の買取りと再整備を通じた中古車販売事業も新たな事業として検討しているO

 中古車販売事業については、日本車の需要が高い海外中古車市場だけでなく、わが国でも中古車に対する抵抗感の低下によって国内市場も拡大してきており、中古車販売に事業のウエイトを置く同業他社も近年大きく業績を伸ばしているといった状況であるO。D 社は中古車市場が今後も堅調に成長するものと予測しており、中古車販売事業に進出することによって新たな収益源を確保するだけでなく、現在の中古パーツ販売事業にもプラスの相乗効果をもたらすと考えている。従って、D 社では中古車販売事業に関して、当面は海外市場をメインターゲットにしつつも、将来的には国内市場への進出も見据えた当該事業の展開を目指している。

 しかし D 社は、中古車販売事業が当面、海外市場を中心とすることや当該事業のノウハウが不足していることなどからリスクマネジメントが重要であると判断Wしており、この点について外部コンサルタントを加えて検討を重ねている。

D 社と同業他社の要約財務諸表は以下のとおりである。なお、従業員数は D 社 53名、同業他社 23 名である。

手順2:各設問文を読んで、何を答えればいいのかを把握 ⇒1.5分

問1は定番の経営分析

問2は?

問3は定番の意思決定会計

問4はリスクマネジメント?

手順4:各設問文を読んで、与件文の関連箇所の行番号とキーワードをわかる範囲で書き出し ⇒3分

手順5:難易度の確認と関連する設問同士の関係性を確認して解答順序を決める 0.5分

問1、4を先に、2、3を後回しにした。

第1問(配点 25点)

財務諸表を利用して、診断及び助言の基礎となる財務比率を算出する能力を問う問題

手順2、4の実施結果

与件文で指標の見当をつけて、指標名を書き出す。➡

(設問 1 )
D 社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較して D 社が優れていると考えられる財務指標を 2 つ、D 社の課題を示すと考えられる財務指標を 1 つ取り上げ、それぞれについて、名称を(a)欄に、その値を(b)欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を1、2の欄に、課題を示すと考えられる指標を3の欄に記入し、(b)欄の値については、小数点第 3 位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。また、解答においては生産性に関する指標を少なくとも 1つ入れ、当該指標の計算においては「販売費及び一般管理費」の「その他」は含めない。

指標の選択と値の計算

与件文で指標の見当をつけて、指標名を書き出す。 ➡ 優れた指標①②、課題の指標③の3指標 ➡ 生産性の指標も選択のこと ➡ 『当該指標の計算においては「販売費及び一般管理費」の「その他」は含めない』➡ 損益計算書の販管費明細も異例 生産性指標の大きなヒントか? ➡ 与件文にヒントが探せない 

➡ ①売上高の比率は103465:同業115138=1:1.11… ➡ 与件文②のSから収益性が優れていると予想し確認 ➡ 売上総利益が1:0.59と同業の2倍近く良い ➡ 売上高総利益率=61652÷103465×100%=59.59%(他社31.78%) 

➡ ②収益性が良いので効率性も良いのではと予想し確認 ➡ 棚卸資産回転率=103465÷3097=33.41回(他社22.08回) 

➡ ③生産性は課題で決定 ➡ 生産性の指標は知らないのでパス ➡ 粗付加価値労働生産性が正解か?=付加価値÷労働者数={営業利益(会社が付加)15002+人件費(労働者が付加)22307+減価償却費(資産が付加)2367+地代家賃(大家地主が付加)3114+租税公課(国が付加)679}÷53人≒820.17 

解答例

➡︎ ①(a)商品回転率 (b)25.79回  ②(a)有形固定資産回転率 (b)4.56回  ③(a)売上高営業利益率(b)0.32%  ④(a)負債比率 (b)403.82%

(設問 2 )
D 社が同業他社と比べて明らかに劣っている点を指摘し、その要因について財務指標から読み取れる問題を 80 字以内で述べよ。

財務比率を基に、事例企業の財務的問題点とその要因を分析する能力を問う問題 

財務的特徴と課題

付加価値労働生産性が劣っている。要因は、廃棄された車からの部品回収を人海戦術で行っているためである。これは、有形固定資産回転率からも読み取れる。(文字数:72)

解答例

➡︎ 上記参照

第2問(配点 20 点)

 D 社は、海外における中古自動車パーツの需要が旺盛であることから、大型の金属積層造形 3D プリンターを導入した自動車パーツの製造・販売を計画している。この事業において D 社は、海外で特に需要の高い駆動系の製品 A と製品 B に特化して製造・販売を行う予定であるが、それぞれの製品には次のような特徴がある。製品A は駆動系部品としては比較的大型で投入材料が多いものの、構造が単純で人手による研磨・仕上げにさほど手間がかからない。一方、製品 B は小型駆動系部品であり投入材料は少ないが、構造が複雑であるため人手による研磨・仕上げに時間がかかる。また、製品 A、製品 B ともに原材料はアルミニウムである。

 製品 A および製品 B に関するデータが次のように予測されているとき、以下の設問に答えよ。

3D プリンターを用いた新事業における短期利益計画において、与えられた製品データ と制約条件のもとで、利益を最大化するセールスミックスを算出する能力を問う問題 

手順2、4の実施結果

時間がかかりそうなので本問は最後に解く

(設問 1 )
D 社では、労働時間が週 40 時間を超えないことや週休二日制などをモットーとしており、当該業務において年間最大直接作業時間は 3,600 時間とする予定である。このとき上記のデータにもとづいて利益を最大にするセールスミックスを計算し、その利益額を求め(a)欄に答えよ(単位:円)。また、(b)欄には計算過程を示すこと。

値の計算

➡ Aの限界利益/時間={7800-1600(400×4)-2400(1200×2)}÷2=3800÷2=1900円

➡ Bの限界利益/時間={10000-800(400×2)-4800(1200×4)}÷4=4400÷4=1100円

➡ 利益を最大にするセールスミックスは、Aを最大限生産販売することである ➡ 3600÷2=1800 ➡ Aを1800個:Bは0個生産 ➡ 利益額=1800×3800-4000000=2840000円

解答例

➡︎ 上記参照

(設問 2 )
最近の国際情勢の不安定化によって原材料であるアルミニウム価格が高騰しているため、D 社では当面、アルミニウムに関して消費量の上限を年間 6,000 kg とすることにした。設問 1 の条件とこの条件のもとで、利益を最大にするセールスミックスを計算し、その利益額を求め(a)欄に答えよ(単位:円)。また、(b)欄には計算過程を示すこと。

当該事業の短期利益計画において、制約条件が複数存在する場合のもとで、利益を最大 化するセールスミックスを算出する能力を問う問題 

値の計算

➡ A、Bを最大利益を生む生産量だとすると、2A+4B≦3600 ➡ 4A+2B≦6000 ➡ A、B≧0 ➡ 以上の条件を満たすA、Bは ➡ 2B≦1800-A ➡ 4A+1800-A≦6000 A≦1400 ➡ B≦200

➡ 最大利益=1400×3800+200×4400-4000000=2200000

解答例

➡︎ 上記参照

第3問(配点 35 点)

 D 社は新規事業として、中古車の現金買取りを行い、それらに点検整備を施したうえで海外向けに販売する中古車販売事業について検討している。この事業では、取引先である現地販売店が中古車販売業務を行うため、当該事業のための追加的な販売スタッフなどは必要としない。

 D 社が現地で需要の高い車種についてわが国での中古車買取価格の相場を調査したところ、諸経費を含めたそれらの取得原価は 1 台あたり平均 50 万円であった。それらの中古車は、現地販売店に聞き取り調査をしたところ、輸送コスト等を含めてD 社の追加的なコスト負担なしに 1 台あたり 60 万円(4,800 ドル、想定レート: 1 ドル=125 円)で現地販売店が買い取ると予測される。また、同業他社等の状況から中古車販売事業においては期首に中古車販売台数 1 か月分の在庫投資が必要であることもわかった。

 D 社はこの事業において、初年度については月間 30 台の販売を計画している。
 以下の設問に答えよ。

手順2、4の実施結果

時間がかかりそうなので本問は問題4の後に解く

(設問 1 )
D 社は買い取った中古車の点検整備について、既存の廃車・事故車解体用工場に余裕があるため月間 30 台までは臨時整備工を雇い、自社で行うことができると考えている。こうした中、D 社の近隣で営業している自動車整備会社から、D 社による中古車買取価格の 2 %の料金で点検整備業務を請け負う旨の提案があった。点検整備を自社で行う場合の費用データは以下のとおりである。

このとき D 社は、中古車の買取価格がいくらまでなら点検整備を他社に業務委託すべきか計算し(a)欄に答えよ(単位:円)。また、(b)欄には計算過程を示すこと。なお、本設問では在庫に関連する費用は考慮しないものとする。

中古車販売事業における点検整備業務において、与えられた費用データに基づいて関連 原価を適切に把握し、外注すべきか否かに関する適切な意思決定について助言する能力を 問う問題 

値の計算

➡ 買取価格をAとする ➡ 1台経費中の変動費=6000円+7500×0.3=8250円/台 ➡ 変動費が委託料を下回る上限の買取価格は ➡ 0.02A<8250 ➡ A<412500

解答例

➡︎ 上記参照

(設問 2 )
 D 社が海外向け中古車販売事業の将来性について調査していたところ、現地販売店より D 社が販売を計画している中古車種が当地で人気があり、将来的にも十分な需要が見込めるとの連絡があった。こうした情報を受けて D 社は、初年度においては月間 30 台の販売からスタートするが、 2 年目以降は 5 年間にわたって月間販売台数 50 台を維持する計画を立てた。

 この計画において D 社は、月間 50 台の販売台数が既存工場の余裕キャパシティを超えることから、中古車販売事業 2 年目期首に稼働可能となる工場の拡張について検討を始めた。D 社がこの拡張について情報を収集したところ、余裕キャパシティを超える 20 台の点検整備を行うためには、建物および付属設備について設備投資額 7,200 万円の投資が必要になることがわかった。また、これに加えて今後拡張される工場での点検整備のために、新たな整備工を正規雇用することにした。この結果、工場拡張によって増加する 20 台の中古車にかかる 1 台あたりの点検整備費用は、直接労務費が 10,000 円、間接費が 4,500 円(現金支出費用であり、工場拡張によって増加する減価償却費は含まない)になる。

 この工場拡張に関する投資案について、D 社はまず回収期間(年)を検討することにした。回収期間を求めるにあたって D 社は、中古車の買取りと販売は現金でなされ、平均仕入価格や販売価格は今後も一定であると仮定した。なお、設備投資額と在庫投資の増加額は新規の工場が稼働する 2 年目期首にまとめて支出されることとなっている。また、D 社の全社的利益(課税所得)は今後も黒字であることが予測されており、税率は 30 %とする。

 上記の条件と下記の設備投資に関するデータにもとづいて、この投資案の年間キャッシュフロー(初期投資額は含まない)を計算し(a)欄に答えよ(単位:円)。また、(b)欄には計算過程を示すこと。さらに、(c)欄には(a)欄で求めた年間キャッシュフローを前提とした回収期間を計算し、記入せよ(単位:年)。なお、解答においては小数点第 3 位を四捨五入すること。

工場拡張投資において、与えられた予測情報に基づいて適切に将来キャッシュフローを 計算し、回収期間を算出する能力を問う問題 

値の計算

➡ 追加分20台のCFになるので、50台と30台の場合の差額キャッシュフローの計算であることに注意!!

➡(a)15660000

➡(b)減価償却費7200×0.9÷15=432 ➡ 増加売上高60万円×20台×12月=14400 ➡ 増加支出取得原価50×20×12=12000 ➡ 減価償却費432 ➡ 労務費1.45×20×12=348 ➡ 初年度CF(投資額除く)=(14400-12000-432-348)×0.7+432=1566万円 ➡ 15660000円

➡(c)② 7200+1000(=50×20)≦1566(1年)-1566(2年)-1566(3年)-1566(4年)-1566(5年)370/1566(6年)≒5.24年

解答例

➡ 上記参照

(設問 3 )
 D 社は、工場拡張に関する投資案について回収期間に加えて正味現在価値法によっても採否の検討を行うことにした。当該投資案の正味現在価値を計算するにあたり、当初 5 年間は月間 50 台を販売し、その後は既存工場の収益性に鑑みて、当該拡張分において年間 150 万円のキャッシュフローが継続的に発生するものとする。また、 5 年間の販売期間終了後には増加した在庫分がすべて取り崩される。この条件のもとで当該投資案の投資時点における正味現在価値を計算し(a)欄に答えよ(単位:円)。また、(b)欄には計算過程を示すこと。

 なお、毎期のキャッシュフロー(初期投資額は含まない)は期末に一括して発生するものと仮定し、割引率は 6 %で以下の係数を用いて計算すること。また、解答においては小数点以下を四捨五入すること。

工場拡張投資において、計画された期間終了後のターミナルバリューと各期のキャッシ ュフローを算出し当該投資案の正味現在価値を求めることで、投資の経済性評価を行う能力を問う問題 

値の計算

➡ 「当該投資案の正味現在価値を計算するにあたり、当初 5 年間は月間 50 台を販売し、その後は既存工場の収益性に鑑みて、当該拡張分において年間 150 万円のキャッシュフローが継続的に発生するものとする」➡ 「その後」とは6年度期末?5年度末? ➡ 6年度期末なら対象外の値 ➡6年度末ながら対象になるらしい ➡ 永続価値=「永続的に一定のキャッシュフローを生む事業などの現在価値」(定義の引用元)➡ 5年の投資期間なら投資の残余価値も5年末でNPVの算定対象に含めるべき(在庫投資の50万×20台=1000万円は5年度末に在庫取崩=残余価値を計算して含めた)が、設備投資の残余価値(7200万-5年間の減価償却費=5040万円)はNPVで算入されていない。その理由を推測すると、当該設備が5年度末で除却されないためだと考える。そうすると設備投資が6年度以降もCFを生む事業として存続するため、残余価値ではなく永続価値として算入する理由に納得がいく。あくまでも私見です…。

➡ 「5 年間の販売期間終了後には増加した在庫分がすべて取り崩される。」➡ 在庫投資1000を除却

➡ 初年度CF(投資額除く)=(14400-12000-432-348)×0.7+432=1566万円

➡ 1~4年度期末CF=(14400-12000-432-348)×0.7+432=1566万円 ➡ NPV=1566×(4.2124-0.7473)=5426.3466

➡ 5年度期末CF=(14400-12000-432-348)×0.7+432+1000+150/0.06=5066万円 ➡ NPV=5066×0.7473=3785.8218 NPV=9212.1684-8200≒10121684円

第4問(配点 20 点)

D 社が中古車販売事業を実行する際に考えられるリスクを財務的観点から 2 点指摘し、それらのマネジメントについて 100 字以内で助言せよ。

手順2、4の実施結果

問題2、3に時間がかかりそうなので本問は問題1の後に解く

短期的なメリット

第3問から、海外との取引がメインとあるので、売買時の為替変動リスクがある。毎月50台の在庫管理リスクもある。為替予約と在庫管理の精度アップが必要。

解答例

➡ 売買決済時の為替変動リスクが考えられる。また、為替変動によって在庫投資で予定していた台数を確保できない、過剰になるというリスクもある。リスク回避のためには、為替予約などのマネジメントが重要になる。(文字数:98)

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